夜勤の仕事をしている友人から聞いた話です。 友人は某菓子会社の工場に就職しました。 その工場では警備員ではなく夜勤の社員2人組で工場を巡回して見回りするそうです。 その日、友人は先輩のDさんと共に夜勤の見回りの仕事になりました。 Dさんは怖い話が大好きで、休日になるとバイクで心霊スポットに出かけるほどだったそうです。 そして、そこで起きたことを友人に話してくるのです。 でも、友人は怖い話が苦手だったのでそのときは話半分に聞いていたそうです。 見回りの仕事は1人が9時と11時に見回りをする。 何かあれば警備室の電話に連絡してもう1人と対処する。 もう1人は2時と4時に同じように見回りをする。 そして、6時に来る人と交代する。 眠たければ仮眠室で眠るという内容だったと思います。 最初にDさんが9時の見回りに警備室を出ました。 友人は一応電話の前で待っていましたが、一度も鳴ることなくDさんは帰ってきました。 友人は2時・4時だったので仮眠を取ろうとしていましたが、Dさんが案の定怖い話をしてきました。 友人は一応先輩なので聞くようにはしていたそうです。 その日、Dさんは直近でいった心霊スポットの話を饒舌に話しはじめました。 心霊スポットは聞いたことがない場所けど県内だったそうです。 いつも話半分に聞いていた友人はDさんの話に徐々に引き込まれ、気がつけば2時間、聞き込んでしまったそうです。 それほど臨場感たっぷりの話だったそうで。 Dさんは話し終えると、「じゃあ」と言って、11時の見回りに出かけました。 友人はDさんの怖い話を反芻しながら、時々聞こえる風の音などに怯えながら待っていました。 しばらくしてDさんが帰ってきました。 また怖い話をするのかなと思ったら、警備室に入ってきたDさんは「眠い」と大きな欠伸をして、 Dさんは「俺、あと寝るからよろしく」と、 警備室の中にある階段を上っていったそうです。 友人は「分かりましたー」と、 呼びかけました。 呼びかけて、しばらくして 友人は辺りを見回して声を上げました。 それもそのはずです。 警備室に階段なんてありませんでした。 でも、友人は警備室の奥にあった階段を上っていくDさんを見ていました。 足音もしっかり聞いています。 しかし、どんな階段だったかどうしても思い出せないそうです。 混乱しながら友人はDさんの名前を大声で叫びました。 ですが、返事はありません。 次に友人はDさんの電話に掛けてみました。 しかし、Dさんの電話は自分の荷物の横にあったDさんのコートの中で鳴っています。 その後、友人は工場内を探しましたが、見つかりません。 もう打つ手がなくなった友人は工場長に電話しました。 12時を回っていましたが、工場長はすぐに電話に出ました。 「どうした」と、眠気混じりの応答に友人は今起きたことを話すと、 「落ち着け。そこで待ってろ」 しばらくして工場長がきました。 友人と工場長は懐中電灯を手にDさんを探しました。 すると、友人がDさんのバイクがないことに気が付きました。 工場長は「家に帰ったかもな」とDさんの家電に電話しましたが、出ません。 そこで工場長が家に行くと言って、車でDさんのアパートに向かいました。 友人は一応仕事として工場の見回りをしたそうですが、Dさんは見つからず。 工場長から電話があったのは3時頃、 「アパートにもバイクはなかった。すまないが1人で仕事してくれ。手当は出す」 友人は工場長の言う通り仕事を終え、朝来た人と交代しました。 それからもDさんはまったく姿を現しませんでした。 1週間後、Dさんの遺体が見つかりました。 話していた、心霊スポットの近くで。 詳しい死因やどうしてそこにいたのか、友人は知らないそうですが、警察から帰ってきた工場長の顔が見たことのないほど真っ青だったことから、まともな死に方じゃあなかったんだろうなと友人は悲しげに語りました。 友人はそれからも仕事を続けていますが、警備室に階段が現れたのはあのときだけだそうです。 |