今年が始まって、二日の話。
その日は、風邪をひいているというのに友人に『一生のお願い!』とやらで友達の部屋を訪れていた。
「あのさぁ、大晦日開けてから押し入れからドンドン叩かれる音がするんよね。」
「で?私、お祓いできんよ?」
「いや、説教できるやん。」
ビビりまくった様子の友人を訝しく思いながら、押入れを開くと一瞬男の子が膝を抱えて座っているように感じた。
よく見ると、大人の私でも一抱えにしなきゃいけないくらいの大きなクマのぬいぐるみだった。
「出たいんやないん?」
「いやよー。なんか見よる気するやん!」
「あんたねー、押入れに閉じ込められたら寂しいし、怖いって思うやろ?」
「ぬいぐるみやもん!」
「アホか?生き物の形をしとる以上、何が入ったっておかしないわ。寒かったし辛かったなぁ、もう悪させんのよ。」
そう言いながら私はぬいぐるみを小さな子供が座れそうなベンチ型の収納庫に座らせた。悪い印象はなかった。
「なんもせんでいい?」
「お香と水。後、おにぎり作ったげて。おすべりは、捨てんと食べたげて。」
「おすべり?」
「供えた後のやつね。」
「えー!」
「座敷童子を手放したいなら、お炊き上げしてもらいや。」
「座敷わらし?幸せになる?」
「なんじゃないかなぁ?全然嫌な気配がない。でも、アンタは閉じ込めたんやけん、ちょっとは供養する!」
「わかったよー……」
どうやら飽き性な友人は、ちゃんと供養をしているらしい。
1週間後、彼氏が出来た!スクラッチで高額当選した!と、幸福を謳歌している。