ちっと、暗い、暗い

我が家の仏壇には吊り灯篭があります。

金色の吊り灯篭は24時間点けっぱなしにしてあり、中の豆電球が切れると取り替えるのです。

ですが、私達家族は豆電球が切れた事に気がついた事がありません。

横浜に住んでいる伯母が知らせてくれるのです。

それは私達家族にとっては普通の事で、父も慣れているので電話が来ると「姉さん、すぐ取り替えるよ」と仏間に行き

「やっぱり切れてたよ。」と伯母に報告するのです。

横浜に住んでいるのに、なんでそんな事がわかるのか不思議で、一度「伯母ちゃん、なんで仏壇の電気が切れた事わかんの?」と、聞いてみました。

伯母ちゃんは、『あのね、父ちゃんが(私の亡くなった祖父)戸をスーと開けてね、《ちっと、暗い、暗い。まなぐ、見えねえ。》って言うのよ。』(まなぐ=目)と教えてくれました。

どうやら仏壇の電気が切れると、私の亡くなった祖父が、伯母の所に出て来るらしいのです。

戸がスーと開くとその向こうは田舎の仏間になっており、吊り提灯が消えて薄暗くなった仏壇の前に、祖父が座り手招きしながら『ちっと、暗い、暗い。まなぐ、見えねえ。』と言うそうです。

田舎に連絡を入れるまで、あちこちの、ふすまや障子を開けて出続けるそうです。

だから連絡しない訳にいかないのです。

今でも仏壇の電気が切れると伯母から電話が来ます。

祖父は今も《ちっと、暗い、暗い・・・》と伯母の所に出続けているのです。

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