ひろし君

 私が小学校2年生の時に、私と母で、ひろし君の家に遊びに行った。​

 ひろし君の家は、小学校をはさんで、丁度反対側にあり、少し遠かったが、母と手をつないで歩いて行った。
 ひろし君とはクラスが同じで、とても仲が良かった。
 学校でもよく遊んだが、親同士も仲が良かったと記憶している。
 ただ、ひろし君は、身体が弱く、いつも真っ白な顔をしていて、学校を休むことが多かった。

 ​学校が早く終わった平日の午後、母と二人ひろし君の家に着いて、親達は茶の間でお茶を飲みながら話し、私達は隣のひろし君の部屋で、二人でゲームなどをしながら楽しく遊んだ。
 いろいろなルールが増えてゲームが盛り上がり、私達は大声ではしゃぎながら夢中になって遊んだ。
 いつもは痩せていて病弱なひろし君だったが、この日はとても元気で、転げ回っておなかを抱えながら笑っていた。しまいには、机の上からジャンプして思う存分遊んだ。
 本当に楽しくて、帰る時間があっという間にやってきた。
 ひろし君も私もブーブー文句を言いながら仕方なく、「あした、学校でまた遊ぼう」と言って、バイバイした。

 翌日、ひろし君に会うのを楽しみに学校へ行くと、ひろし君は学校に来ていなくて、朝の会の時、先生から「ひろし君が、きのう病気で亡くなりました」と聞かされた。
 私はとても驚いて、泣きながら家に帰った。
 母に、「ひろし君ときのう遊び過ぎて、具合が悪くなったの?」と聞きました。
 すると母は、「きのう、ひろし君とは、遊んでないよ。ひろし君は、病気で入院してたから、遊べないよ」と言うのです。​
 それは、おかしい。
 ぜったい遊んだのに、夢じゃないのに、私以外、誰も覚えていなかった。

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