あてずっぽう

なんとんなく、なんの根拠もないまま適当な事を言って、たまたま当たった時、あなたはそれを偶然だと思いますか?

これは私が中学生だった時のお話です。

その頃から怖い話や幽霊が大好きだった私はある夜、同じく怖いもの好きな友達のゆきちゃんの家でお泊まりをしており、いつもの様にネットの恐怖体験や都市伝説を語っていました。

盛り上がっていたところ、ゆきちゃんが急に布団にもぐりはじめたので、

「どうしたの?」と聞くと、

「ともちゃんはさぁ、幽霊実際に見たことあるんだよね?そしたらさぁ、頑張ったら背後霊とか守護霊とか、見えるんじゃない?」

冗談ぽく言うゆきちゃんの顔は、布団の影に隠れてよく見えませんでしたが、笑っているようには見えませんでした。

私は子供時代からはっきりと幽霊を見たことは何回かありましたが、意識して見たことはなかったので、少し興奮して、やってみようと思いました。

じーっと瞬きせず友達の顔をみていましたが、とくになにも見えず、やっぱり無理かとあきらめるとふいに、脳裏にイメージが浮かび上がりました。

青い帽子をかぶり、ジャージを着た、おじいさん。

「青い帽子かぶったジャージのおじいさんしってる?」と、脳裏に浮かんだおじいさんをあってずっぽうで言ってみました。

ゆきちゃんは布団をはぐって急に起き上がり、「なんで知ってるの?ここにいるの!?」と、真顔で叫びました。

私は正直に、嫌、ただのあてずっぽうだよ、と答えましたが、ゆきちゃんは

「ともちゃん、本当はみえてるんでしょ?」と、小さく笑っていました。  

ゆきちゃんは小学生の時両親が離婚して、父親に引き取られたのですが、離婚前まで、釣り好きな母方のおじいさんとよく遊んでいたそうで、とても可愛がられていたそうなのですが、離婚とともに疎遠になってしまい、先日そのおじいさんがなくなったそうなのです。

そのおじいさんはよく青い帽子をかぶっており、いつもお気に入りのジャージ姿だったそうです。  

その出来事以来私は、ただのあてずっぽうを大事にしています。

朗読: 繭狐の怖い話部屋
朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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