この度は

祖母が亡くなった。

両親や兄姉は黒い服に着替えている。

「昨日まで元気だったのに、急な話よね…」

急に言われても信じられない。

というより、祖母はいつも「殺しても死にそうにない」と言われているほど元気な人だったから、なんだかピンとこなかった。

家の中には、知らない人が出入りするようになった。

葬儀屋さんだ、葬儀屋さんは分かる。

黒い腕章をして「この度はご愁傷様です」と言っている人たちだ。

でも、顔も手足も全部真っ黒な人の形をした影や、首から上が無い人も居るんだけど、それも葬儀屋さんなの?と聞くと、『ああ、それも葬儀屋さんみたいなものだよ』と祖母が答えた。

祖母は棺桶の中から起き上がると『さあ、忙しくなるよ』と台所の方に歩いていった。

お通夜が始まり、親戚や祖母の友人が集まってきて、棺桶を覗き込む近所の友達といつも通りに盛り上がっている。

近所の人達も、普通に祖母と話している。

それからお葬式、火葬場でのお骨拾い、初七日を過ぎたが、祖母は今までと変わりなく生活している。

朝の散歩も欠かさないし、自分の仏壇を毎日拝んでいる。

両親や兄弟達には見えないみたいだけど、私とは普通に話しも出来る。

やっぱり死んでる気がしない。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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