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公園の徘徊者

3年前の9月尽

 遅い昼飯を食べようと、近場のめし屋に入ると 知り合いの刑事さんがいた。

軽く挨拶をして向かいの席に座ってもいいかと聞くと嬉しそうにどうぞと言う。

注文を済ましてどちらからともなく世間話をしていたが、ふと最近あったことを

思い出して話題にしてみた。

自分「ウチの向かいに小さな児童公園があるのは覚えてる?」

刑事「ああ、あなたのお家は公園の角に面してたね。 しかも目の前が公園脇の道路で

   あなたの家はちょうどТ字路のどんつきにあるから、この仕事についてからは

   なんてノビ(泥棒)が嫌う立地なんだと思ったもんだよ」

自分「そうそうw 人通りも車通りもあって、見通しがいいからなぁウチは。

   でね、つい先日の日曜日にその公園の周りをさ…」

刑事「うんうん」

自分「おかしな奴がぐるぐる周回してたんだよ」

刑事「おかしな奴?」

自分「ぱっと見は大学生くらいの男でね、野球帽をかぶって 手にはバッグをさげててさ

   左手には某有名カフェのタンブラーを持っていて それを飲みながら歩いてるって

   感じかな。 近所では見かけたことのない顔だったなぁ」

刑事「公園のベンチにでも腰掛けて飲みゃいいのにな。 落ち着きのない野郎だw」

自分「だろ? そいつ自分が見ていただけでも その調子で最低5周はしてたよ。

   しかもドリンクなんか飲んじゃいないんだ」

刑事「は?どーゆーこと?」

自分「ずーっとタンブラーを口のところに構えて持ったまま ぶつぶつ何か

   言ってるんだよ。

   まっ昼間から ありゃなんなんだろうね? 最近のハヤリはわからないよw」

 そう言いながらどんぶりから顔をあげると刑事の顔が引き締まった表情になっていた。

刑事「そりゃホントか? マジならちょっと知り合いの刑事をセツグウさせたいんだが

   いいか?」

自分「え?ナニ? なんか問題アリなのか? ええと…わざわざ来なくても今ヒマだから

   こっちから出向いてもいいけど?」

刑事「いや。 現場を見ながらの方がありがたい。 オレのヤマじゃないんだが

   知り合いの関係でちょっとな。 N署から行くと思うから、日時を指定してくれよ。

   そいつらが事情を話すと思うしな」

 指定した日にN署の刑事さんが2人してやってきた。

こんなことでもない限り めったにお目にかかれない警察手帳をマジマジとながめつつ

見た限りのことを話すと一生懸命メモをとったり、いろいろな質問を恐縮そうに

聞いてきたりと小一時間はかかった。

 その刑事さんの話では、最近は泥棒も手が込んできたと言うのだ。

人がいないうちに入る「空き巣」も 人が在宅していても隙をついて入る「居空き」も

要は何時にどんな家人がいるか、いないかの情報合戦になっている傾向があるらしい。

その情報を手に入れるために ネットでバイト募集をかける裏サイトまであるとか。

刑事A「情報が詳細であればあるほど金額が高いらしく、あなたが見た男はもしかすると

    タンブラーにカメラとマイクが仕込んであった可能性がありますね」

自分 「・・・な、なるほど~。 まぁ違うといいなとも思いますが。 物騒ですね」

N署の刑事さん2人は 丁寧に礼を言って帰っていった。

 後日、知り合いの刑事さんから連絡があり、なじみの店で会うことにした。

店に入ると 自分の顔を見るなり苦笑いっぽい表情を見せて手招きする。

刑事「あなたが見た男ね、トッたよ」

自分「たいしたもんだね~。 え?まさかウチの近所で捕まったとか?」

刑事「そう。 しかもノビの下見役なんてケチなもんじゃなかった・・・」

 あの男はいわゆる一方的粘着ストーカーだった。

公園の周りを不自然なふるまいで徘徊していたのは、近所のマンションに住む女性に

悪さをするための下見だったらしい。

粘着しすぎて自分のおかしな行動を客観的に判断することすらできなくなっていた。

N署からの通達で、巡回していた巡査に職務質問をかけられたあげく捕まった。

その時 路駐させていたその男のレンタカーから出てきた物の中に

ガムテープ10巻・ガソリン入りのポリタンク・刃渡り30㎝のナタ・50枚入り空きDVD

・デジタルビデオカメラ・三脚 などがあったそうだ。

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