深夜の病室で

私が中学生くらいの頃に祖母が入院したことがあったのですが、これはその時に私の母が経験したお話です。

ある日、祖母が体調不良により倒れてしまい救急車で運ばれました。

歳だったこともあり念のためにそのまま入院して様子を見る事になったのですが

急なことだったので父は対応できず、母が祖母の付き添いをすることになりました。

祖母は父方の人だったのですが、昔から霊感が強いと言われており、そのことが頭に合った母は良からぬことが起きなければいいけど、と思いながら付き添いを承諾しました。

夜も更けてきた頃、母は祖母のベットの隣の椅子で本を読んでいたそうです。

静かな部屋には時計の音がカチコチと響いており少し怖がりだった母は今自分が夜の病院に居るということを紛らわすように本に集中していました。

すると、もぞっと布団が動いたかと思うと祖母が目を覚ましました。

「あ、目が覚めましたか?何か飲み物でもいりますか?」

祖母は母の問いかけには一切反応せず、ベットの足元の方を見ながら

「そこに居るのはだあれ?A君?」と話し始めました。A君とは私の兄の事です。慌てて祖母の目線に目を向けても誰もなにもいません。

上半身を起こした祖母は一息ついてからまた独り話し始めました。

「あら、A君じゃないのね。どうしたの僕、お腹すいたの?」

母の事を認識していないかのように淡々と一人話を進めて行きます。

「あら、窓の外にも誰かいるのね。いやねぇ、睨んできて」

見たくはないと思うものの、つい窓に目がいってしまいますが、もちろんなんの影も形もありません。

それにこの病室は3階にある部屋なので人がいるはずはありません。

「まぁ、ベットの下にもいたのね。どうしたの?かくれんぼでもしてるのかしら」

体を横に傾かせて下を見るようにして祖母は問いかけました。母は、怖くて部屋から出ようとも考えたそうですが目を離したすきに祖母がいなくなったりしては大変だということでガタガタ震えながら椅子に座ったまま耐えていたそうです。

一体この部屋に何人いるのか、気が遠くなりそうだったと話していました。

その後、三十分程祖母の独り語りが続いたそうですが、「あら、あなた寒そうね。こっちいらっしゃい。お布団あったかいわよ」

と自分の隣をポンっと叩いてから「そろそろおばあちゃんも眠くなってきたわ」と言って

朝まで眠りについたそうです。

念のため、朝起きた祖母に母が昨日の深夜の出来事を聞いてみたところ幽霊などの不思議なことはなかったかのように淡々と

「知らない子たちだったんだけど、たくさん来て相手してたからくたびれちゃったわ」

と話していたそうです。

母は少しげっそりしたような顔で

「次に泊まりがあってもあたしは行きたくないからね」と父親に言っていたのが印象的です。

怖い話が好きだった私は母には申し訳ないですが内心ちょっとおもしろそうだな、と思ったのを覚えています。

母の話では、幽霊が見えてたわけじゃないから幽霊が怖いって気持ちよりも祖母の事が怖かったと話していたので人怖に投稿させていただきました。

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