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可哀想

会社の同僚の玲子は、『私って可哀想じゃない?』が口癖の俗に言う悲劇のヒロイン症候群だ。会社の休憩時間、ランチの時等、時と場所を選ばぬ玲子の不幸な自分語りに、私を含め皆飽き飽きしていた。

玲子は、不幸な自分語りだけならまだしも、先輩にイジメられているとの事で可哀想そうだと思い、親身に話しを聞いてあげれば、次の日には、その先輩に、私が悪口を言っていたと言う感じで告げ口するタチの悪さだ。

そんな玲子と帰りのバスが一緒になってしまった。私は席を別にしようと考え、下を向き後方の席の隅に移動したが、玲子は私に気づいて隣に座り『ね〜聞いて今日、仕事の書類ミスしたのを、全員の前で部長に怒られて、まるで晒し物だよ!私、可哀想じゃない?もー私死にたい!』と、また、ネガティヴ全開の自分語りを私に向けて話し始めた。私は、滅多な事も言えないので、下を向き、押し黙っていると、急に後ろの席からカスれた男の声がした。

『それは、可哀想だ!酷い!晒し者にされたなんて…恥ずかしくてもう生きていけ無いよね…ボクが救ってあげるよ…』と聞こえた次の瞬間、玲子の後ろの席に座っていた、黒いパーカーのフードを目深に被った男は玲子の髪を後ろへワサッ!っと掴かみ、錆びついた鎌を取り出し、その鎌でザックリと玲子の喉元を切り裂いた………口からドロッとしたドス黒い血液の泡をブクブクと吐きながら、鯉のように口をパクパクさせている玲子……その光景を目の当たりにした私は初めて玲子の事を心底可哀想だと思えた……

朗読: モノクロDEVICE
朗読: 繭狐の怖い話部屋

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