強盗殺人放火

(実話です)

古い蔵のある隣の家のまわりを、柄の悪そうな 人が うろついていた。 明らかに 町の人とは 違う雰囲気 。父が言った「 借金取りかもしれないな」

家の地区では、もう直ぐ山の祭りがある。

お隣さんとは、祭りの準備で一緒になる

「何時も通りに接しなさい」と父に言われた。

それから数日後

「栗拾って来て」母に言われ栗拾いに庭に出た。家は田舎で敷地が大きい。誰にも会わないからパジャマでノーブラ、台所のザルを持って栗の木まで行った。

木の下の方、奥の茂みにスーツの男がいる……誰だろ?

私の気配に気が付き振り返った男は、私に

望遠カメラを向けた。

『!!!?』何? 借金取?声ガ出ナイ。コワイ。体ガ動カナイ。

本当に怖い時には声が出ない事を、初めて

知った。

私を見て男は驚き…無言で一礼した。

カメラを下げて…両手を手をあげた。

胸のネームを一生懸命見せてくる。

【△△新聞社 報道部 記者 ○○○○(名前) 】

『あ、地元新聞社だ!』私は無言でカクカクうなずいた。

男は口に指を当てシー!とジェスチャーすると一礼し、また茂みに隠れた。

私も黙って母屋に戻った。

「栗、拾えなかった」訳を話したら「新聞記者?…わかんないけど、仕事なら仕方ないべ」と母は言った。

我が家は寛大で断れば何でも許す。

??そういうもん??

翌々日、お隣に大勢の警察の人が来た。お隣の兄さんが警察に逮捕され連れて行かれた。

資産家の婆ちゃんに借金を断られ首を絞めて殺し、金を奪い家に放火したそうだ。

地元新聞に記事が大きく載った。我が家の庭から撮影したであろうスクープ写真が出ていた。

テレビの取材がいっぱい来たけど、犯人の人柄を悪く言う人は誰もいなかった。皆、信じられなかった。

人を殺してから捕まる迄の一月、本当に普通だった。お祭りの荷運びの為、私は二人きりで山に登ったりもした。

転びそうになった私を助けてくれた手。

お菓子くれた手。優しくしてくれた手。

その手で人を殺してた。

その後、警察で「 どうしてそんなことをしたのか、よくわからない」と話したそうだ。

ワタシ、オニイサンニヒトヲコロサセタモノヲ、シッテイルカモシレナイ

(怪談の『座敷牢』に続きます。)

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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