貸家

一ヶ所になかなか留まれない私の、最初の貸家のお話です。

最初に借りたのはアパートではなく、一戸建ての平屋でした。
玄関のすぐ左側がトイレ。このトイレの磨りガラスには時々人の影が張り付いています。
勿論借りてからしばらくしてだんだん気付いたんです。

言い忘れましたが、私はこの家に主人と娘、息子の四人で暮らしていました。
途中離婚して3人暮らしになりましたが、最初の貸家は他より長く住んだんです。
トイレに張り付いてる人?は何も悪さはしませんでした。
嫌なのはその他。
本当は何人いるんでしょう?明け方が多いんですが3時から4時?あたり。
金棒をシャンシャンつく音で目が覚めるんです。
ズルズル金棒を引きずる音もします。何となく旅のお坊さんを連想させるような。
毎回ではありませんが結構頻度は高めでした。

その他、日中も冊子のすぐ外を金棒をつきながら歩く音がする事もあり、全く姿は見えないんです。
日中なのに音がはっきり過ぎてとても怖かったのを覚えています。
時にはサッシをすごい勢いで叩いて家の周りを何度も回られた事も数回ありました。
近所を歩いていると首だけ出している男か女かもわからない人がいたり、
自販機の横にランニング姿の上半身だけの人が動かず居座っていたり。
動いたらもっと怖いんですが。

この辺はとてもこんな人たちが多い…印象の土地でした。
そうなんです。毎回ではないのですが、普通にチラホラ見えてしまうのです。
だからって何が出来るわけでもないし。和尚の血筋のせいかもしれません。たまたまかもしれませんが。

近所の話からまた話は貸家に戻ります。
この貸家は本当に騒がしい貸家でした。
幼い息子が夜寝る前に「お母さん!口裂け男が窓から覗いてた!」と絶叫して部屋から大泣きで飛び付いて来た事がありました。
夢見たんだよと笑って言いましたが本当に何かいたらゾッとします。
何かが住み着いているような貸家でしたが娘と息子には心霊現象に関しては一切言いませんでした。
怖がらせてもすぐには引っ越す余裕もなかったので。

後になり成長した娘が私に言いました。
「お母さん、私、最初の家怖かった。
お母さんには言わなかったけど昼間一人で居間にいると家の周りを金棒みたいなの引いて歩く音がするの。
怖くてこたつに頭から入って隠れてた。
そしたら今度はこたつの周りを金棒ついて歩き回るの」
娘も同じ音を聞いていた。その時私も初めて娘に自分も同じ音を聞いていた事を伝えました。二人が聞いていたなら、気のせいとか、病気とかそんな話じゃないなと改めて思いました。この辺は色々曰くつきの土地らしく。落ちがあるわけではありませんが懐かしいけど怖い貸家でした。

その時私も初めて娘に自分も同じ音を聞いていた事を伝えました。
二人が聞いていたなら、気のせいとか、病気とかそんな話じゃないなと改めて思いました。
この辺は色々曰くつきの土地らしく。
落ちがあるわけではありませんが懐かしいけど怖い貸家でした。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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