親友の家で

お盆って仏様が帰って来る日って言うじゃないですか。
私は普段から亡くなった人が見えてしまうことがあり…お盆は特によく見かけてしまいます。
それは私がまだ結婚する前の事。
お盆休みの夜、仲良しのF子の嫁ぎ先へ遊びに行った時のお話です。

F子が結婚する前からご主人とも交友があった私は、すっかり話に花が咲き、
アルコールも進み、気付いたら夜中の2時を回っていました。
「そろそろ帰るね」
かなり酔っぱらっていたと思いますが、なにぶん階下にはF子のお姑さん達が休んでいるので、
音を立てない様に、静かに階段を下りて行きました。
外にはタクシーも待っていて、私は廊下を背に玄関で靴を履いていました。

かかとを靴に入れようと屈んだ時です。
足の間から白い素足が並んで見えました。
「家の人起こしちゃった!」
私は焦って靴を履き振り返り、その足に向かって
「すみません、遅くまでお邪魔しました。」と声をかけました。
都合の悪さに酔いも一気に吹き飛んでしまいました。
返事が返らないので頭を上げて正面を見ると、そこには誰もいません。
ただ、目の前には綺麗に灯された灯籠と大きな仏壇がありました。
私は慌てて玄関先から仏壇に手を合わせました。
ご先祖様が嫁いで来た嫁の友達を見に来たのでしょうか?
それとも見送りに来てくれたのでしょうか?
怖かったけど、ちょっと私にとっては都合の悪い出来事でした。
遅れて見送りに下りてきたF子が、「どうしたの?」と不思議そうに首を傾げていました。

それから何年たったでしょう?
F子の義理のお父さんが亡くなり、私はお悔やみを手に訪れました。
あの大きな仏壇に手を合わせ、F子のご主人に挨拶をし、家を出ました。
車に乗ろうと、ふと庭先を振り返るとそこには生前とあまり変わらないF子のお義父さんがいました。
それは家を心配して見回っているような、そんな姿でした。
お父さんを亡くしたばかりのF子のご主人にはそんな話は出来ませんでしたが、
ここはご先祖様がしっかり守り、お盆には皆帰る家なんだな。と思いました。
いい所に嫁いだね。F子。
そんな思いで私はF子の家を後にしました。
勿論、F子は幸せそうです。

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