それまでは大丈夫

今日は私の母が勤めている保育園の話をしようと思います。

母がある日、同僚のAさんから 『大部屋に荷物を置きに行くとき、付いて来てくれませんか?』 と言われました。
荷物がたくさんあるのかと思い、すぐに了解しました。
いざ、運ぶ時に荷物の量を見ると段ボールがひとつだけ。
母は思わず 『これだけ?』 とAさんに尋ねました。
Aさんは 『はい … 怖いんです』 と訳の分からないことを言い始めました。
『なにが?』 と母が再度尋ねると
『 … あの大部屋に行くのが怖いんです』 とやや気まずそうに答えてくれました。

話によると、同じクラスを担当しているBさんには霊感があるようで、
先日その部屋で一緒に片付けをしていた際、
『この部屋いますよ』 と真顔で言われたことが原因のようでした。
そんな話を聞いて、母も少し恐怖を感じながらも一緒にその部屋についていってあげることにしました。
その部屋はいつも子どもたち過ごす遊戯室なのですが、子どもがいないこともあってか、
電気がついているにも関わらず、どこか薄暗く感じたそうです。
しかし、その部屋で何か起きたというわけでもなく、片付けは終わりました。

後日、母は保育園の敷地内にある離れに行く用事があり、Bさんと一緒に向かうことになりました。
母が興味本位で、 『ほかに保育園内で霊がいる場所ってあるんですか?』 と聞くと、
Bさんは 『はい、ありますよ。この先です。』 と離れの物置部屋を指さしました。
物置部屋はカーテンで仕切られており、子どもたちが使う玩具等が置かれています。
『ここにずっといるんです。見たくもないくらい、強い何かがいるのを感じます。』 と母に向かって言いました。
母が改めて物置部屋を見ると、カーテン下の隙間に土気色をした両足がはっきり見えたといいます。
『えっ』 と思わず母が声をあげるとBさんは物置部屋から目を背けながら言いました。
『あなたにも見えたんですね。両足と顔が反対向きでこちらをじっと見つめる子どもが見えます。』
と苦虫を潰したような顔で話しました。
先述した通り、母には両足しか見えませんでしたが、一刻も早くこの場を立ち去りたくて黙っていました。
職員室に戻ったあとは、母、Aさん、Bさんの三人で休憩を取り、そこでさっき行った離れの話になりました。
Aさんはすっかり怯えてしまい、
『霊感がある人と長くいると自分も見えるようになるって言うじゃないですか!だから私、Bさんとは仲良くなりません!』
と本気か冗談かわからないことを言い、
Bさんは、 『そんなこと言わずに仲良くしてくださいよ〜』 と笑って答えました。

Aさんが先に休憩を終え、母も休憩を終えようとしていた時、気になっていたことをBさんに聞くことにしました。
『Bさん、あの幽霊は私たちに危害を与えるくらいの強い霊なの?』
それに対してBさんは、
『はい、遊戯室にいる霊よりもずっと強い霊です。ですが、園長先生自身の力が強くて霊たちは手出しできないみたいです。』
と話していました。
母はそれを聞いて安心し、職員室を出ていこうとしました。

ですが、最後にBさんが、
『 … まあ、園長先生がいるまでは、ですけどね』 と聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で言っていた、とのことです。

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