内見

 これは私が内見で行った、部屋の話。

 内見って、鍵を貸してもらって、一人で行くことができるところもあるじゃないですか。
 その時は丁度私の予定が合う日が不動産屋さんの休みの日で、鍵を貸してもらって、一人で内見に行くことになったんです。
 そこは立地条件もなかなか良くて、見た目も綺麗で、なかなか住みやすそうな建物でした。
 ちなみに先に言っておくのですが「そこが実は事故物件で……」とかそういうオチじゃないです。

 それで、中はきれいなフローリングの床に、一室の畳の部屋がある、割とある作りでしたが、すごく綺麗でした。
「別に事故物件みたいに値段が極端に安かったりしないし、ここに決めちゃおうかな?」と思っていた時。
 ふと、壁に取り付けられているインターホンの、室内側の機械が目に入ったんです。
 その機械は、どうも履歴とインターホンを押した人の姿が記録されるようになっていて、その履歴のボタンが赤く光っているんです。
 内見に出している部屋なので、誰も住んでいないはずなのにおかしいな……と思っていたのですが、どうも変なのです。
 インターホンの履歴に写っているのは、ヤマト運輸などの宅配業者の方や、ピザハットなどのデリバリーの方が写っているんです。
「部屋番号を間違えているのかな?」と思ったのですが、結構な件数、その履歴が残っているんです。
 一番最近のものは昨日……出前の方の履歴です。

 そこで、はっとあることに気が付きました。
 この部屋には誰かが住んでいるんじゃないか。
 確かにこの部屋は不動産屋さんの物件情報上は誰も住んでいないことになっています。 というか、鍵もかかっているし、入居情報がないので、絶対に住んでいる人はいないんです。
 でも、明らかに誰かがこの部屋にいないと来ない人たちがここに来ているんです。
 そこまで気がついた時、私はすぐに部屋を出て、警察に行きました。

 翌日、その部屋から一人の男が見つかり、逮捕されました。
 その男は、畳の部屋の押し入れの天井裏に隠れていたそうです。
 内覧が来たときには毎回天井裏に隠れて、やり過ごしていたそうです。
ちなみに、その男が言うには、「もし、誰かが入居したら、殺して自分が住む予定だった」とのことです。
 もしも、このことに気づかず、入居していたら……。
 もし、この先物件の内見に行く方。 その物件、本当に誰も住んでいませんか?
 今住んでいて、入居してからあまり日が経っていない方。
 本当にそこに住んでいるのは、あなたや、あなたの家族だけですか?

 以上でこの話は終わりです。

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