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初めてのお葬式

これは、私が初めて参列したお葬式での出来事です。

当時、私はまだ5歳くらいで、お葬式だったと認識したのは大分年月が経ってからでした。
亡くなったのは母方の祖母の叔母くらいの親戚でしたが、両親が参列するため姉と共に連れて行かれたのだと思います。
昼間だったので、告別式だったのかもしれません。
お寺の御堂のような広いところで、知らない大人たちと一緒にテーブルを囲んで、お葬式が始まるのを待っていました。

菊とお線香の匂いが充満しており、当時匂いに敏感だった私は気持ち悪くなりながら、手持ち無沙汰に過ごしていました。
他に子どもはおらず、姉は年が離れていて小学生だったのでお葬式の意味がわかっていたのでしょう、
大人しくしているので、私は退屈だったのを覚えています。
何度も父や母、祖母や叔母にいつまでこうして待っているのかと聞いては、
「もう少しだから待っていなさい」という曖昧な答えを聞いて不満でした。

それから少しして、トイレに行こうとしたのだと思います。
私は立ち上がり移動して、トイレを済ませ、母たちの座るテーブルに戻ろうとしていました。
私は物凄く方向音痴で、デパートなどでもトイレから出ると自分がどこから来たのかわからなくなるタイプです。
その時も、帰り道が分からず御堂の中を歩き回っていました。
母たちを探してキョロキョロしていると、棺の近くを通り掛かりました。
何故か棺の蓋が開いており、何が入っているのか好奇心を持った私は、何の気なしにひょい、とそれを覗きこみました。

当たり前ですが、中身はご遺体でした。
お葬式の親戚は面識がなく、知らない人だと思ったことは覚えています。
ただその顔が、ものすごい苦痛に歪んでいて、目はカッと見開かれ、
今にも悲鳴が聞こえてきそうなほど口を大きく開けて歪めていて、私は恐怖のあまり慌てて棺から離れました。
当時の私はアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」を毎週見ており、その親戚の死に顔が、当時のアニメエンディングで最後に流れる怖い妖怪の顔に見え、
「人間は死んだらあんな顔になるのか」と大きなショックを受けました。
多分ほぼ同時に、葬儀屋さんか喪主の親戚の人に棺を見ていたことを気付かれ、慌てて抱っこされて母たちの元へ連れて行かれました。
母たちが、「こんな小さい子ウロウロさせてはダメだ」と言われていたのを覚えています。

もちろんその後、母に叱られ姉にもバカにされました。
しかし、私は棺で見たものがショックで、母は怒っていたので祖母に、
「怖い顔してた…」と幼いなりに話しましたが、「そうなの?大丈夫よ、ちゃんと優しい顔にしているから」と言われ、
納得出来ないながらも、暫く祖母にくっついていました。

その後、告別式が始まりましたが、
私はあの顔が頭から離れず、いつ「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪のように出てくるかとビクビクしていました。
やがて読経も終わり、棺を開けてお花を手向けることになりました。
祖母に花を持たされ、「○○ちゃんも、お花上げてちょうだい」と言われましたが、
あの怖い顔をもう一度見るのが怖くて、なかなか近付けません。
母に、「まだ持ってるの?早く入れなさい」と急かされ、棺の足元の方にそっと入れました。
その後は火葬場に移動し、骨になったご遺体を骨壷に納める段階になったのでほっとしました。
姉と2人で骨壷に納めたことまで覚えています。

ここまで読んで頂いてお気づきの方も多いと思いますが、棺に収めるご遺体の目が開いていることは無いですよね。
亡くなられたらご遺体は綺麗にされ、目や口も閉じた眠ったようなお顔にして安置されることが普通だと思います。
私がその事を知ったのは、中学生で父方の祖母が亡くなった時でした。
それまではずっと、棺の中のご遺体は亡くなった時の顔のままだと思っていたのです。
中学生でそれを知った私は、そこで親戚のお葬式で見たものがおかしかったことを知りました。

そして、あまりにも気になったので、母にそれとなく聞きました。
「昔お葬式で亡くなった方を見たとき、すごい怖い顔してた記憶があるんだけど、なんでだろ?」と話すと、
母は少し考えたあと、「ああ、おばあちゃんの親戚のお葬式のときかしら?アンタフラフラしてたけど、怖がってたもんね」と言いましたが、不思議そうに首を傾げました。
「でも、お花あげるときは普通だったわよ?あんたも見たでしょ」と聞かれたので、実は怖くて足元にお花を入れたと伝えました。
母は「呆れた!」とちょっと怒っていましたが、気のせいでしょ、と言われて終わりました。

その後、何かの話で再びその親戚の話を聞く機会があり、その話でゾッとしました。
その親戚の死因は末期ガンだったそうで、鎮痛剤もあまり効かず、亡くなる直前までかなり苦しんだとのことでした。
長い闘病生活だったそうで、「大変だったんだ…」と呟いたら、
「苦しんで苦しみ抜いて死ぬっていうのは辛いことだろうけどね」と祖母が少し含みを持たせた言い方をし、
母から「おばあちゃんは亡くなった人に辛く当られてたのよ」と教えられたのです。
そこで唐突に、あの時見たあの怖い顔は、まさに死に際の苦しんだ顔であり、
亡くなった人は祖母への憎悪の気持ちで私にあんな顔を見せたのだ、と納得しました。理屈は特になく、その説明なら合点がいく、と思ったのです。

今でも私は、棺の中のご遺体を見るのは苦手です。
もうあんなことは無いだろうと思ってはいても、なるべく見ないようにしています。

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