視てはいけない

わたしの母が勤めている保育園には霊感を持っているBさんがいます。
霊感がある人の近くにいると影響されることがあるなんていいますよね。

このお話は、母が体験した話です。
保育園の未満児を担当している、母、Bさん、Cさん。
不思議な何度も経験しているBさんが怖がりなCさんを脅かすように話をするのがいつもの休憩中の光景でした。
そんなある日の会話の中で、Cさんが
『この間、誰も動いていないのに室内の空気清浄機が急にゴォーっとものすごい音を立てて動き出したんですよ ! 』
と手ぶり身振りを、これでもかと激しくしながら私達に伝えてきました。

皆さんもご存知かと思いますが、空気清浄機は空気の汚れを感じると綺麗にしようといつも以上に働いてくれます。
母は笑いながら 『室内の空気が悪くなったのに反応しただけじゃないですか ? 』 と伝えました。
しかしCさんはそれが何度もあったんだと聞かず、Bさんの表情を伺いました。
それに対してBさんは口角をあげてCさんを見つめ返したことで、Cさんが空気清浄機の近くで仕事をしないきっかけとなりました。

次の日、この日は母が一人でお昼寝中の子ども達を見ながら連絡帳を記入することになっていました。
母は昨日の話を思い出しましたが、所詮機械と自分に言い聞かせ、連絡帳を書くことに集中しました。
2、30分程度経った頃でしょうか、急に 『ガコン ! 』 と大きな音をたてて空気清浄機が止まりました。
幸いにも子ども達は誰一人起きませんでした。
母はほっと胸を撫で下ろしながら空気清浄機の目の前に行きました。
しゃがんで故障していないかどうか確認しようとした、 その時です。
急に背中側からぞわぞわっと悪寒が走りました。
『後ろにいる』
母は直感でそう感じました。
まず未満児が音も立てずに母の後ろに立つことは不可能です。
空気清浄機に手をかけたまま身体は固まってしまいます。
『ペタ』
小さなひんやりとした手が母の首に手をかけ、 もう一つの手がまた母の首に 『ペタ』
さらにまた手が … 首に触れる手の数がどんどん増えていきます。
触れられている手は小さいはずなのに到底幼児のような手とは思えない力で母の首をぐいぐいと空気清浄機のほうへ押していきます。

まずい、このままだと空気清浄機に顔が押しつぶされてしまう。
そう考えながらも身体は思うように力が入らず、全身から汗が吹き出しました。
と、急に 『ガラガラッ』 と部屋の扉が空いたかと思うと
『目を閉じて、早く』 とBさんが母に言いました。
母はなんのことかわからないまま、ぎゅっと目を閉じました。
そしてすぐにBさんは 『彼女は違うよ、あなた達の先生であって先生じゃないの』
室内全体にぴしゃりと言い放ちました。
すると、あの手のペタっとした感覚が急になくなり、母はそのまま空気清浄機にもたれかかるようにするように脱力しました。
母の身体を起こしながらBさんが
『ごめんなさいね、明日私が子ども達のお昼寝の担当だったから、明日中にどうにかしようと思っていたのだけれど』
申し訳なさそうに伝えてきました。

母はCさんが空気清浄機に得体の知れない恐怖を感じていたのは気のせいじゃなかったんだと、
まだぼんやりとしている頭の中で思いました。
母が 『Bさん、どうしてさっき私に目を瞑れと言ったの』 と尋ねると
『あの子達はね、普段保育園にいる子ども達と一緒に遊びながらも、どこか寂しい気持ちを抱えているの。
大人からの愛情が欲しかったのよね。彼らと目を合わせるときっと忘れられなくなる。
それくらい目を合わせたら悲しい気持ちに苛まれるのよ。子どもが好きであれば、あるほどにね』
と話してくれました。

その後、母は体調不良で早退することになり、Cさんにとても心配されましたが
『実は朝から体調が良くなかった』 と伝え、これ以上恐怖の火種を撒かないようにしました。
次の日出勤するとBさんは 『もう大丈夫、あの子達はここにいるけど、もうあなたに危害を加えることはないわ』 と話してくれました。
祓ったり無理やり成仏させるという手段もあったかもしれないけれど、
それよりもあの子達が心ゆくまでこの園で過ごして、
他の子ども達と同じように卒園してくれたらいいなと
母は話の最後にそう付け加えました。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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