ツツジ咲く麗日

これは私の母の体験談です。
以前ホラホリ図書館のほうにいくつかお話をあげましたが、私の母は「見える人」です。

数年前の春、私が中学生の時、夕方に母が友人とのショッピングから帰ってくると、開口一番に「今日みた!」と私に叫んだのです。
私はショッピングモールに行くということは聞いていたので、「何?有名人でもいたん?」と生返事をしました。
すると母は、少し興奮気味に「違うって!おばけみたんだって!」というのです。
想定外の内容で私はとても驚きました。
母が「見える人」であり、若い頃に頻繁に霊を見ていたということは聞いていましたが、
まさか直近でそんな体験をし、それについて聞けるとは思ってもいなかったからです。

その日、やはり母は友人とその人の持つ車でショッピングモールに行ったそうです。
その際、友人は母を迎えに来てくれたそうです。
そして出発して数分後、信号待ちをしていると急に友人が大きな声を上げ、こう言いました。
「ねぇ!あれって〇〇さんじゃない!?」と。
母も「ほんとだ〜、お散歩かな〜」と呑気に答えました。
そのおじいさんは母と友人の職場である歯医者の患者さんでした。
そのおじいさんは歩道の植え込みで綺麗に咲くツツジの花を眺めながら散歩をしていたそうです。
すると、友人は「なんでよ!?ありえないじゃん!!」と叫びました。
そして母も気づきました。
そのおじいさんは亡くなり、予約をキャンセルするという主旨の内容の電話を奥さんからされていたからです。
そしてなにより、その時電話で対応をしたのが私の母だったのです。
おじいさんは奥さんとの仲も良く、よく受付の母とお話をしていた、とても明るい人だったそうです。
もしかすると何か未練や執着があり、まだ成仏できていないのかもしれません。

しかし、この世に残ってしまう人は必ずしも負の感情を持っているわけではないと私は思うのです。
ただ陽気の中、花を見ながら散歩をしたい、そんな無垢な願いのために、まだ現世を離れられない、そんな方もいると思うのです。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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