こんなんやったで

子どもの頃はよく変顔をしてると親から、 「そんな顔をしてるとバチがあたるで」 と叱られたものだ。

私が社会人になった頃、 小学校の同窓会をすると幹事から電話がかかってきた。
「なぁ、お前同窓会参加する?お前と仲良かったKもくるらしいぞ」 と言われ同窓会に参加する事にした。
K君とはよく遊んでいたがある出来事をさかいにひきこもるようになって音信不通になった。
K君はお調子者でクラスの人気者だった。
私はあまり友達は少なかったが、 誰とも気さくに話すK君とは仲良くなった。
K君お得意の持ちネタがあり、 「こんなんやったで」 と言って顔をぐしゃぐしゃにしてクラスメイトを笑わせていた。

私はK君に誘われてK君の家に遊びに行くことになった。
K君の家の近くまで着くと、 電柱の陰で斜め上をじっーとみつめてフードをかぶっている男がいた。
顔がまったく見えず、なにをするわけでもなくじっーと斜め上を見てるもんで気味が悪かった。
K君が 「あのオッサンの顔見てみようぜ」 とふざけて声をかけに行った。
その時私は寒気が走りK君を止めなくてはと思った。
時すでに遅し、K君はもう話しかけていた。
私は男を見ないようにしてK君に 「もう行こう」 と言ってうでを引っ張った。
私は男と目をあわせていないが、 こっちをじっーと見られているように感じた。 K君は 「こんなんやったで」 と笑いながら言っていた。

そしてK君の家につき、テレビゲームをした。
ゲームも飽きてきてふと窓をのぞくと、 まだあの男が電柱の陰にいる。
私はぞっーとしてうつむいた。
しかしK君は双眼鏡を持ってきて男の顔を見ようとした。
K君が 「ないっ」 「顔がないっ」 と言って男が見ている斜め上に双眼鏡を傾けた瞬間に 「ぎゃぁーーーーー」 と言ってK君は驚き腰をぬかしてしまった。
それからK君はカーテンをしめて 「もう、帰れよ」 と言われ私は帰ることにした。
K君は何を見たのかわからない。
帰りに電柱の陰を見たが男はいなかった。

次の日、K君は学校に来なかった。 K君に電話したら、 「こんなんやったで、こんなんやったで、こんなんやったで」 としか言わなかった。
それからK君は学校に来なくなった。
そのK君が同窓会にくる。 私は同窓会の会場に向かった。
K君の姿がない。 すると幹事あてに警察から電話がかかってきた。
「交通事故をおこした遺体が同窓会のハガキを握りしめていました。」 とのこと。
私たちは状況確認しに行く事になった。
K君の顔は損傷が激しく顔はぐしゃぐしゃだった。
ドライブレコーダーに不審な男が映っていると、その男に心当たりはないかその映像をみせられた。
K君はあの時の男の前で車をとめ、 車をバックさせ急加速し男をひくようにして電柱に突っ込んだ映像だった。
警察はその男の遺体が無いし不可解な事件だと言っていた。

みんなは気づいていない様子だったが、 私は気づいた。
斜め上の電柱に引っ掛かったぐしゃぐしゃになった男の顔がにたりと笑っている事に。

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