ぬけさく先輩

これは工務店で大工として働いている男性、Yさんの話。

Yさんが中学生の時は80年代で、当時の漫画などの影響か不良や暴走族に憧れる少年達が多かった。
Yさんも御多分に漏れず、そんな少年の一人だったそうです。
ですから、つるんでいた仲間も悪い人間が 多かったし、彼自身も悪い事をたくさんやったと話していました。 今は若気の至りと反省しきりなのだそうですが。 そして、そんなYさんには少し変わった先輩がいたのだそうです。
坊主頭で、いつもヘラヘラしていて、バイクの事故のせいで顔に大きい傷があり、前歯が折れている。
パッと見た印象だとだいぶ間の抜けた風体の人だったと話していました。

当時、人気があったギャグ漫画のキャラクターに似ていたため「ぬけさく先輩」と陰では呼ばれていたそうです。
ただ、そんな見た目に反して喧嘩は強かっらしく、Yさん達は絶対に怒らせないようにしていた。
そして、その先輩がどう変わっているのかという話なのですが、時折り奇妙な行動をとるのだとか。
誰もいない方向に手を振ったり、笑いかけたり、何かを話していたり。
「シンナーでもやってラリってるんだろ」 と、言うのは他の先輩の談。
確かにそう思えるほどに挙動がおかしい事が多かった。

とある日の事。
仲間の一人の両親が用事でいないというので、その仲間の家に集まる事になった。
もちろん、ぬけさく先輩も参加していた。
みんな未成年だったが酒やらタバコやらが用意され、
「自分の子供だったらぶん殴ってるよ」 と、自分で言ってしまうくらい悪い意味で盛り上がったそうです。

そんな中、ふと点けっぱなしのテレビに目をやると心霊番組がやっていた。
乗せたはずの白い服の女が消えた、とかそんな感じのタクシーの話だったと思う…と、Yさんは話してました。
で、なんとはなしにみんなでその番組を観ていたら、ぬけさく先輩が急に「んなワケあるかよ」と笑い始めた。
続けて、 「アイツらモヤっとしてて、服どころか女か男かもわかんねぇじゃんな?」 などと言い出したそうです。

Yさんは、
「その人、実はシンナーとかやってなくてね。おかしな感じになったのはバイクで事故ったのが原因らしくてさ、もしかしたらそん時に見えるようになったんかなぁ…て、みんなで話してたよ」
そう、最後に話していました。

朗読: 思わず..涙。


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