奇術

手品、マジック、あるいは奇術と呼ばれるものは、年々そのトリックの巧妙さが増し、どんどんスゴイ技が登場してボクらを楽しませてくれる。

ボクが子供の頃に流行っていたのは、箱に入った人にナイフを刺して別の箱から表れるとか、手錠をして水中に入れられ、時間内に脱出しないと大爆発するとか、そんなものだった。
一番グロかったのが、電動丸ノコで人間を切断する「人体切断マジック」というものだと思う。
催眠術で助手を台の上に寝かせると、大きな電動丸ノコが出てきて、助手の体を真っ二つにするというものだ。
上半身と下半身をぶった切って、最後は無事、元の体に戻った助手が目覚めるというものだった。

あるとき、家でお留守番をしていたボクは暇なのでいつものようにテレビを見ていた。
チャンネルを回しているとなんだか安っぽい舞台の上でマジックを披露しているシーンが映った。ちょうどこれから「人体切断マジック」をするところである。
昔はエロとグロが普通にお茶の間に流されていた時代である。子供も耐性ができていたものだ。
やがて台の上に眠らされていた助手が「ぎゃぁぁぁ」という叫び声あげ、それと共に血しぶきが飛び散り、助手のお腹に電動丸ノコの刃が入って行く。
手品師はその血まみれの腹に指を突っ込んでぐちゃぐちゃとかき回し、内臓を引きずり出して、指でもてあそんで観客に見せていた。
「うわぁぁ」と思ってみていたが、やがて手品は終わったのか、電動丸ノコと切断された助手はそのまま台ごと舞台袖に下げられていった。
「あれ?助手さん、元に戻って出てこないのかな?」
そう不安に思って見ていたが、結局、最後まで切られた助手が舞台に戻ってくることはなかった。
恐ろしい想像と不安だけを残して、番組は終わった。

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