近所のおじさん

私が小学校の頃、 両親は共働きで一人っ子だったので近所のおじさんとよく話していた。
近所のおじさんの家には大きな畑があり、 トマトや果物などよくくれたものだ。

近所のおじさんと最初に話したのは、 おじさんがカギをなくしたと困っているのを私が畑の近くの植木のそばでみつけた事からだった。
おじさんは70歳前後で、
「最近物忘れがひどくてね。ありがとう」 と優しい感じだった。
私が学校帰りは一人で暇なので、おじさんの畑を耕すの手伝ったりして過ごしていた。

ある日、おじさんの家にあがった時の事。
「ちょうど、お茶をきらしてね~」 と言っておじさんは近くのスーパーまで買いに行った。
私は、トイレに行きたくなり部屋を出ると空かずの間だろうか鎖と南京錠でカギを閉めた部屋をみつけた。
古い家だからか、何か臭い。
その空かずの間の前を通るとやっぱりそのにおいが鼻をさす。
私は興味本位で少しだけ開くドアのすき間から中をみた。
私はそのにおいの正体がわかった。
それは漬物だろう、大きな壺がふたつあった。
その途端おじさんが帰ってきて血相を変えて 「あけるな!!」 と怒鳴った。
しかし 「漬物が空気にふれて品質が悪くなるからね」 と優しく言い直してくれた。
気をとりなおしておじさんとお菓子とお茶をいただいた。

私が中学生になる頃には友達も出来ておじさんとは疎遠になった。
おじさんの姿もみることはなかった。
ある日の晩近所で事件でもあったのかサイレンがなりやまない。
警察官が家にも事情聴取にきたらしいが、私は部活動で朝早かったので寝ていた。
朝、ニュースを見て唖然とした。
近所のおじさんの畑にて白骨化した遺体があがったらしい。
その遺体は、その家主と言う事だった。
父親がいたが、顔を見合わせて言った。
「誰?」
家主とおじさんは違う人物。
あの、おじさんは誰だったのか? あの壺の中身は漬物だったのか?

朗読:かすみみたまの現世幻談チャンネル


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