友人

その日、僕は友人のKと飲みに行っていた。

LINEのやり取りなどはたまにあったが、日頃お互いに忙しいのもあり直接会うのは久しぶりだった。
その為、話は盛り上がり気付けば終電に間に合わなくなっていた。
タクシーで帰ればいいか、なんて思っていたが。

K「そう言えば俺三ヶ月前に引っ越ししたんだけど、今日泊まって行きなよ!」

最初は断っていたが、お酒も入っていたのもあってか、やたらKの誘いがしつこい。
結局Kの家に泊まることにして、Kの家に着き軽く飲み直し、気づけば2時半くらい。 流石に寝ることに。
Kは、コタツで寝るからベッドを使って良いよと言い即寝。
僕もベッドで横になるや直ぐに寝てしまった。

どれくらいだろうか… 僕は喉の渇きで目が覚めた。
はっきりとした時間は見ていなかったが、まだ外は暗い。
Kの家に来る前にコンビニで買った水を冷蔵庫に入れてあったので、飲もうとキッチンへ。
Kのアパートは一般的な一人暮らしの部屋なので、リビングを出るとキッチンと風呂、トイレがある。
リビングとキッチンの間にはドアがあり、そのドアの中央には曇りガラスがはめ込まれている。
リビング入り口の足元のコンセントには、ホームセンターで買ったであろう人感センサーで電球がつくライトがあり、そのライトを頼りにキッチンへ。
水を飲み、起きたついでにトイレに行き出てきた時に先ほどと違う違和感があった。
電球の灯りを頼りにキッチンへ行ったのでリビングとキッチンの間のドアを開けていたはずなのだが、閉まっていた。
するとリビングの人感の電球がつき、曇りガラスの前を人影が通り過ぎて行くのが見えた。
Kが起きてドア閉めたのだろうと思いドアを開けた。
しかし、Kはコタツの向こう側で寝息を立てていた。
Kに声をかけようとした時、なんとも言えない嫌な感覚、そして嫌な寒気。
僕は直ぐにベッドへ潜り込んだ。
目を閉じて寝てしまおうと思ったのだが、視線を感じる… 1人2人じゃない、凄い数の目線。
布団を頭までかぶり目を開けないようギュッとつぶっていた。

どれくらい経っただろうか…気づいたら寝てしまっていていたらしく、薄暗いがカーテンの間から外は何となくだが明るくなりはじめているのがわかった。
寝ぼけていて、頭が回っていない状態だったので、あの目線の感覚も夢だったのでは? なんて思っていたのだが。
上半身だけ起き上がり、ふと横を見るとテレビがついてる。
テレビにセミロングくらいの女が画面いっぱいに映っており。
あれ?テレビいつつけた? 相変わらず寝ぼけた頭でボーっと考える。
画面も白黒ぽい薄い色で、映りもなんだか不鮮明というか薄い…そして女の人をただただ横から顔アップを映しているだけ。
ボソボソ何か言っているのが聞こえたが、ボリュームを小さくしているのか、それともKがテレビでも見ながら喋っているのかと思い。
薄暗い中、コタツで寝ているKに目をやるとKはこちら側に顔を向けて寝ていた。
しかし、僕はKの寝ているコタツ布団に違和感を覚えた。
あれ?水玉模様だったっけ? 僕の記憶では模様なんかなかった気がするのだが。
ボーッとそんな事を考えていると、ある事に気がついた。

模様が動いている。 動いていると言うよりは小刻みに震えている感じ。
Kが震えてるのかと思ったが、そうじゃない。 その模様だけが震えている。
目を凝らして見る。
それらは模様でも何でもない、顔だ。
水玉ぽい模様だと思ったものは全て人の顔、それも髪の毛は無いが無数の老若男女の顔が口をパクパクさせていた。
先程からのボソボソ聞こえていたのはその無数の顔達だった。
怖くなり布団に入ろうと思ったのだが。
恐怖からなのか、金縛りなのか、身体が動かない。
そして、先ほどからのボソボソした声みたいなのが大きくなってきている。
「あ゛ぁ〜」 「う゛〜」 「見せて」 「い゛た」 などと言っていたのを覚えてる。
その声が大きくなるにつれて耳鳴りも凄くなり、眉間にシワを寄せるレベルになってきた。
耳鳴りに耐えるように目をギュッと瞑っていると。
フッ…と、突然時が止まったかのように無音になり、身体も動く。 自分の心臓がバクバクと鳴っているのだけがよくわかった。
恐る恐るこたつ布団の方を見ると、先ほどの無数の顔がこちらを見ていた。
そして、テレビに映っていた女もこちらを見ていた。
その目は眼球が真っ黒なのか、ぽっかりと穴がいていて黒いのかわからなかったが、確かに目が合っている感覚があった。

そこで記憶は飛んでいて、気づいたら朝だった。
Kに起こされる様な形で起きたのだけど。
Kに昨日の事を話そうかと思ったが、勘違いだったり、Kを怖がらせても悪いと思い話さなかった。
朝飯を食べ、Kがテレビゲームをしている後ろで帰りの支度をしている最中。

K「昨日なんかあった?」
と聞かれ一瞬動きが止まってしまった。

僕「い、いや…何もないよ…」 と言うと。
K「チッ」 と舌打ちした様に聞こえた。
僕「え?」 と思い振り返るとゲームのロード画面で一瞬画面が暗くなった時のKの顔がテレビに反射した時その顔は笑っている様に見えた。

それを見て、そそくさと荷物をまとめてその日は帰宅した。
それ以降KとはグループでのLINEはするが個人的には連絡はとっていない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる