高層ビル

 香港に住んでいます。 

 数年前、ネットゲームで知り合ったゲーム友達の家へ招待され、毎日のようにネットゲームで遊んでいた数人と初めて会うことになりました。

 当時住んでいた所と近いのと自分のアパートの契約がもうすぐ切れる事もあり、彼の住んでる住宅地に引っ越すことにしました。
 その住宅地は47階建のビルが10棟あり、その地区ではそれなりに大きな住宅地です。 
 ネットゲームで知り合った彼とは連絡先は交換したものの、同じゲームで遊ぶ事もなくなり、アパートの共通ロビーで偶然あった時に一言二言かわすくらいの関係です。 

 毎晩11時頃に犬の散歩に出かけるのだけど、同じ時間帯に犬の散歩に出かけるおばちゃんと立ち話をしてると 
「ねぇねぇ お兄さんはタワー何番に住んでるの?」 
「僕はタワー9だけど、どうして?」 
「あらっ ラッキーね。 タワー9だけはまだ飛び降り自殺がないのよ」
 香港は土地柄、高層の住宅ビルが多く、飛び降り自殺が圧倒的に多いです。 
 そのような事情のある物件は凶宅と言い、不動産の業者もそんな情報を売買や賃貸の時には公開するよう義務付けられております。 
 余談ですが、自分が中学の時に住んでいた25階建のビルは1年で4人飛んでいます。

 そんなある日、ロビーでネットゲームの彼にばったりあってお話しを聞いたら どうやら引越しをしたらしい。と言ってもここで会うってことは同じ住宅地内での引越し。 
「なになに? 気分転換? タワー1からタワー8に引越したの? 広いところにしたの?」
 なんて質問攻めにしてたら、神妙な顔で 
「そうじゃないんだよ」 
「住んでたタワーで飛び降り自殺があってね」 
 そんな事、犬散歩おばちゃん曰く珍しいことでもないし、そんなんで引越したの? って僕が言うと 
「まぁ そうなんだよね」
「でも目があっちゃったんだよ」 

 彼の説明によると、休日に家でボーッと窓の外を見ていると彼の階を通過した飛び降り自殺者と目があったと言うことらしい。 
 これ以来その光景が目に焼き付いちゃって気持ち悪いから引越ししたと言う事らしい。 

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