僕の夏

 もう数年も前の話です。

 中学生の頃に夏の課題というものがあって夏に研究したことや、発見したことをレポートにまとめて発表するという課題でした。
 もちろん僕はどんな課題にしようか迷っていました。ちょうどその頃、星や星座について授業がありとても興味がありました。
 そんな時たまたまその時期にちょうどペガサス流星群が見える時間帯があることを知り、僕は今年の夏の課題はペガサス流星群について調べてようとおもいました。

 具体的には観察、撮影、資料を見て調べる。そんなところだったと思います。
 当時は小さかったので撮影は父に買ってもらったばかりのデジカメで撮ろうとしていました。
 両親にその旨を伝えると母が『ペガサス流星群は山とかで綺麗にみれるから時間帯を調べて深夜に見に行こうか』と言ってくれました。
 そしたら父も『家族で見に行こう』と言い出したので、妹もいるのですが観に行くことにしました。

 地元にあるT山から車で登り、T山の頂上からさらに高いところまで行くためにIスカイラインまで車を走らせました。
 山道で鹿が出て喜んで写真を撮った記憶があります。
 しかしせっかく山に行き流星群を見るために準備していたのに、結局曇りで見えませんでした。
 この時深夜の1:00を過ぎていてあたりは真っ暗でした。
 デジカメを買ってもらった僕はフラッシュを暗闇に焚いて写真を撮るのになぜかハマっていて、僕自身今でも楽しかった思い出があります。

 そんな感じで帰ることになり下山していた途中でした。
 T山の頂上に駐車場があり、トイレなどもあったため休憩を取りに寄りました。母と妹は夜遅いので寝ていて、父と僕でトイレに行き夜景を一望できるテラスで一息していました。
 相変わらず暗闇をフラッシュで撮影することを楽しんでいた僕は、父に『車に行くからな』と置いてかれていました。
 ついていこうと思った時、ふっとおくの暗い茂みが気になりフラッシュで撮影をしました。すると誰が見てもはっきりとわかるくらい女の人のようなものが写ってしまいました。
 白い服のようなものを着ていて、脚がぼやけて見えなくなっていました。
 何より怖かったのは顔がこちらを向いて目があっていたことでした。今でも鮮明に覚えています。目が赤黒く少し広角が上がっているようにも見えました。

 怖くなった僕は急いで車に戻り、すぐに両親に言いました。
 最初は信じてくれなかった母でしたが見せたらびっくりしていました。
 父は何度見せても見えないの一点張りでした。母は霊感がありますが、父は全く霊感のない人でした。
 母にはすぐに消しなと言われましたが、車での帰り道何度も写真を見返していました。
 するとぼやけていた写真が少しずつ鮮明に見えてきて、輪郭と目が完全に浮かび上がってきたのです。
 心なしか写真の周りも色褪せたような赤に見えて、母に『写真かわったよね!?』と見せるとすごく気持ち悪くそうな、怖そうな顔をした母が写真を消してくれました。
 そのまま家に帰宅し、ベットに入ったのですが女の人の顔が忘れられずにいました。

 翌日の昼あたりにまた気になってデジカメのフォルダを見ました。
 すると消したはずの写真がありびっくりしてすぐ削除しました。
 チラリとしか見てませんでしたが脚以外の部位は全てぼかしが消えていて、鮮明になっていたように見えました。
 その後怖くなった僕はSDカードを壊して捨ててしまいました。

 怖い話はここまでです。
 後日談なのですがカメラが起動しなくなりました。
 その次の週には母が車と車で衝突し軽い事故、僕は体育で転けて右肘を骨折しました。
 デジカメに関しては父に申し訳ないと思ったので壊れたことを言い出せずに修理できず、実家のどこかに眠っています。
 あれが何だったのか、未だに脳裏にあの顔が焼きついて離れません。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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