電話口の女

 これは私が中学生の時に体験したお話です。

 当時、携帯を買ってもらいたてで、部活が終わったら友達とメールをしたり電話をしたりするのが楽しい時期で、特別な話をしなくてもダラダラとメールや電話をしていました。
 その日は確か、テスト期間か何かで部活が全部お休みでいつもより早い下校時間。テスト勉強なんかしなかった私はクラスでも1番仲のいいS君と電話をしていました。
 くだらない話や相談事、色々な話をしていると 「今友達来てる?電話大丈夫なの?」 とS君に言われました。もちろん部屋には私1人です。テレビも音楽も付けていません。
「え?私一人だよ?」 と伝えると 「あれ?なんか騒がしい感じがして、、、俺の方かな?」 と何だか変な雰囲気になりました。
 怖いのは好きだけど、ビビりな私は 「なんだか怖いからこの話はもうやめよ!」 と笑いながら言い、また違う話題で話し始めました。
 すると、話し始めて数分が経った頃 「友達来たのか?」 とS君。
 もちろん来ていません。私の部屋はさっきと同様静まり返っています。
「いないって。本当に怖いから!」
「あ、ごめんごめん」
 そしてまた違う話題へ。でも、私がいくら怖いと伝えても数分経つとS君は「誰?」と言ってくるのです。
 何回も何回も言ってくるものだから、最初は怖かったけど、中盤から好奇心へ変わっていきました。

「なんで誰かいるかって聞いてくるの?」
「だって〇〇の後ろ?で声がするよ」
「、、、ちなみになんて言ってるか聞こえるの?」
「うーん、ボソボソ話している感じだからハッキリはわからない」
「そっか、じゃあ男の人?女の人?」
「女の人かな」
「何人くらいいる感じなの?」
「うーん、2〜3にんだと思う」
「そうなんだ」
「でも最初の頃と比べたら声は少しずつと大きくなってる感じがするよ」
「そうなんだ」

 こう淡々と私は質問をしていました。この時は怖いよりも好奇心が強かったのです。
 でもまだ曖昧な事が多くてその話もいつの間にか終わっていて違う話になっていました。気づけば電話をし始めて2時間は経っていたと思います。
 そろそろお風呂に入ったりするから電話を終わりにしようと思った時、いきなりS君が大きな声で焦りながら私に
「〇〇!!早くその部屋出ろ!」
「え?なんで?」
「いいから!違う部屋に言ったら教えるから、早く出ろ」
 いつもは焦ったり大声を出したりするような人じゃないのでビックリしつつもリビングへ急いで降りました。
 リビングでは母親がテレビを見ていて急いで降りてきた私をビックリしたような顔で見ていました。
「リビングにきたよ」 とS君に伝えました。
 するとS君は安心するかのように大きく息を吐いて一息ついてから話し始めました。

「さっきから俺、誰かの声がするって言ってたでしょ。それが時間が経つにつれて少しずつ大きくなってきたんだ。最初はボソボソ言っていて何を話しているかわからなかった。でも、さっきやっと分かったんだ、何を言っているか」
「、、、なんて言ってたの?」
「女3人の声で、この女いなくなればいいね、うん、そうだね。殺したいね、死ねばいいのにね。って話し合いみたいなのをしてるのが聞こえたんだ」

 S君の言葉を聞いて言葉が出ませんでした。
 その女達の会議?を聞いてS君は私が危ないと思い移動させたようです。
 その日は当然その部屋へは戻れませんでした。リビングにいた母親に訳を説明し一緒に寝てもらいました。

 次の日、学校へ行くとS君がいつもの様に教室にいました。昨日の事を再確認したくてS君の席へと向かいました。
「ねえ!昨日怖くて一人で寝れなかったよ!!」 と少し怒り口調で言うと、S君はポカンとした顔で
「昨日?なに??」
「え?昨日電話した時に!」
「何言ってんの?昨日は〇〇と電話してないじゃん!」
「いやいや、昨日18時くらいから2時間くらい電話したじゃん!」
「待ってよ、昨日俺その時間塾だったけど!」
「え、、、、だって、、」
 話が噛み合わないのです。私は確かにS君と2時間くらい電話をしました。いつもの様に。でも、S君は昨日は電話をしてないと言ってる。
 このままだと拉致があかないので、S君と同じ塾に行っている子にS君を連れて聞きました。
「うん、確かに昨日Sは塾に来てたよ!18時〜22時まで!俺隣の席だったから!」
 その子の話を聞いて頭が真っ白になりました。

 一体、昨日私が電話した人は誰だったのでしょう。そして、私の電話口でボソボソ話していた女は何だったのでしょう。
 ちなみに今現在私は特に悪い事もなく元気です。
 しかし、今でも思い出すだけで鳥肌が止まりません。

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