地元を離れ東京に住み始めて2年。
借りていた賃貸は1DKで広いとは言いがたいが、住めば都、手狭感がむしろ気に入っていた。
その日は20時頃に職場を出て、理由があった訳ではないが、普段は行かないお店で夕食を食べ帰路についた。
帰り道、いつもは通らない路地を抜ける途中、切れかけなのか薄暗くチラつく街灯の下に立っている人がいた。
上下とも白っぽい作業着姿で男性だとわかったが、街灯のほうへ向き微動だにしないその姿に若干の気味の悪さを覚え、足早に横を通り過ぎた。
その場を歩き去りながら、ふと何か違和感があった。 考えを巡らすとすぐに答えが出た。
あの人、頭は街灯を向いているのに靴はこちらを向いていた。
それに気が付いたとき、背筋に寒いものが走ると同時に振り返って確かめてみたいと感じた。
気になってしまったら止めようがなく、ゆっくりと振り返って見ると、まだそこに居た。
チラつく街灯のせいではっきりと見えない。
良く目を凝らして確認しようとしていると、街灯が一瞬チラついた瞬間、その姿が消えた。
少し呆然としていたが、疲れて幻覚でも見たのだろうとありきたりな言い訳を自分にしながら走るように家に帰った。
その日から、ふとした瞬間に後ろ姿の人が現れるようになった。
視界の端に映るが、そちらを見ようとすると消える。
気が付かないほうが良かったのかもしれない。