パワーストーンに纏わる怪談です。
それは私がまだ中学生になったばかりの頃。世の中は、不良に憧れるドラマが放映されており、御多分に漏れず我が中学にもヤンキーと呼ばれて然るべきな方々が、おられました。
私は、そんな不良さんを遠巻きに見ていた一人でした。
図書係をかって出て、放課後、静かな図書室で本を読む。どこにでもいる暗い女子として、一般の生徒に認識されていました。
「なぁ、sayusayu。これ、どう思う?」
いきなり声をかけられ見上げた先に、ソバージュヘアーの長いスカートを引きずっている1学年先輩のYさんが、水晶の握り石を私の目の前に突き出していました。
「握り石ですね。どなたに貰ったんですか?」
「〇〇の滝で拾った。」
〇〇の滝は、平家狩りにあった姫君が身投げをした滝で、今でも怪奇な噂の耐えない心霊スポットです。
「浄化は?」
「浄化?何それ?」
「水晶には、未浄化の物の怪や怨霊がつくと言いますよ。綺麗な天然水に三日三晩太陽光と月光に当てて、不浄を…………」
「めんどくさい。お前にやるよ!」
放物線を絵描き私に飛んできた握り石は、Y先輩の手に戻ります。
「これは、お寺か神社の管轄ですね。先輩もお祓いを受けた方がいいですよ。」
苦い顔をしてY先輩は、図書室を出ていきました.。その1週間後、Y先輩は交通事故でお亡くなりになりました。彼氏のバイクに乗ってダンプカーに接触。お葬式では、最期の対面も出来ませんでした。
しばらくして、私が図書の当番の日、カウンターに見覚えのある水晶の握り石が置いてありました。
迷わず学校近くのお焚き上げで有名なお寺に持ち込み、効いたのかどうかわからないお祓いを受けて帰宅しました。
私に怪奇な事象は、残念ながらおきませんでしたが。Y先輩と一緒にお寺に持ち込んでいたなら、Y先輩だけは助かったのかもしれないと思うと、今でも悔やまれます。