そこには…

 私たち家族は、その年大河ドラマ「真田丸」に熱中したと言うこともあり、夏の旅行はドラマの舞台でもある長野県に行くことになった。

 有名どころの観光名所を回る中、不思議な体験は上田城で起きた。
 その日はとても暑く、観光客で賑わっていた。
 他の人と同様、私たち家族もパンフレットを便りに、城内を回った。
 そんな中、西櫓に辿り着いた。西櫓に辿り着いた時、「ピタッ」と静かになって、空気が変わり、展示物の籠が視界に入った。
 その籠を視界に捉えた瞬間、ひどい頭痛が私を襲い、猛烈にその籠が気持ち悪く感じた。
 私が「この籠、気持ち悪い」と連呼していると、兄も何かを感じていたのか、頷いていた。
 私は、気持ち悪く感じつつも、妙に籠の奥が気になった為、籠に近づき、中を覗き込もうとした。
 その瞬間、兄に肩を掴まれ、「行こう」と言い、その場を後にした。

 その後、何事もなかったかのように、城内の観光を続けた。
 帰りの車の中で私は、西櫓での事を思い出した為、兄に聞いてみた。
「ねぇ。なんであの時、落ち着かない様子であの場(西櫓)を後にしたの?」
「いやぁ。聞き間違いかもしれないんだけどさ、小さい女の子が中を覗き込んで、『中に女の人いるね』って言ってたんだよ」と言った。
 すると、母が「あぁ。言ってたね」と言った。どうやら、母もその籠が気持ち悪いと感じていたらしい。
 後で分かったことだが、その籠は真田信之の妻「小松姫」が使用していた物らしい。
 小松姫は晩年、鴻巣に温泉に行くつもりであったらしいのだが、その道中、落石事故に見舞わられ、亡くなったようだ。
 その遺体を、展示してあった籠で運んだそうだ。
 私たち家族内では「お盆の時期だったから、帰ってきてたんだろねー」という話で落ち着いた。
 果たして、あの時、小松姫は籠の中にいたのだろうか?
 みなさんはこの話を聞いて、どう感じただろうか?

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる