夏の終わりの話です。自分に霊感はありません。

 数年前に会津の蛍祭りに旅行に行きました。父母、姉、そして私の4人で。
 しかし夕方まえから激しい雨に見舞われ、祭りは中止になってしまいました。
 残念でしたが、美味しい夕食を食べて気を取り直していたら、突然雨が止みました。 外に出てみたら満点の星空。
 蛍祭りは中止になってしまったけど、ちょっと夜歩きでもしようかということになりました。
 そうすれば1~2匹の蛍でも見れるんじゃないか。それはそれで乙じゃないか、と期待して。
 しかし星空は見事なのですが、それは足元をちっとも照らしてくれはしません。 目線を水平に落とせば漆黒の闇なのです。
 畑や田んぼ、あぜ道などに足を取られないよう慎重に歩を進めていました。

 そろそろ宿へ引き返そうとしたら、一匹の蛍が。
 それは大した明るさではありませんでしたが、周囲の美しい田園風景を想像させるには十分でした。
 なんだか心洗われような。自然の畏れを感じさせるような。 粘度のある液体の中を緩やかに流れるような。そんな不思議な光源でした。
 そんなたった一匹の蛍を眺めていると、突然携帯が鳴りました。 永らく連絡のなかった中学の男友達からでした。
 同じクラスだった女性が病気で亡くなったとのこと。
 そのひとは絶世の美女で、陰キャの私とはほとんど関わりがありませんでしたが。
 踏ん切りの悪い私に突然キレたり、と思えば私が書いた文章や絵を肩越しにのぞき込んで 「すごいねー」 とか言ってくれたり。キレッキレの不思議さん。
 本当に可愛らしいひとでした。
 霊感など全くない私ですが、彼女が一点の光に姿を変えてあいさつに来てくれた。 と勝手に思い込んでいます。

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