​金縛り

これは10年以上前の大学2年の秋ごろに実際に私が体験した話です。

(特にオチの無い話なので、あまり怖くありませんがご了承ください。)

大学二年の秋のある夜、寝ていると急に金縛りにあいました。

生まれて初めの金縛りは中学1年の時でしたが、

このときは夢の中での金縛りでした。

ですが、大学二回生のときの金縛りは明らかに中学時代のそれとは

異なる体験でした。

以下、金縛りの後に体験した内容です。

私はベッドで寝ていました。急に胸が重苦しくなったかと思うと

いきなり体が「ピーン」と硬直するような感覚がありました。

「あ、金縛りがきた……」と分かりました。

ただ、中学時代に体験した金縛りとは明らかに何かが違っていました。

金縛りの直後に気づいた三つのこと。

一つ目。自分の足の方向に人の気配がすること。

二つ目。完全に脳が起きている感覚があるにも関わらず体が全く動かないこと

三つ目。何か「普通ではない状況下に居る」雰囲気が全身に伝わってくること。

次の瞬間、

「部屋に居る誰かがコッチを見てる…」

という感覚が次第に強くなってきました。

視線と気配を感じるんです。

アパートの玄関はいつもしっかり鍵をかけているので、

寝ている間に勝手に人が入ってくるなんてことはあり得ないはず。

にもかかわらず、

夜中、寝ている自分の部屋の中に自分以外の人間の気配がする。

これほど怖いことはありません。

目だけはかろうじて動くようなので、

勇気を出して寝ている自分の足元の方を見ました。

本来は、

ベッドの向こう側には本棚が置いてあります。

つまり、ベッドで寝ている姿勢から足の方角を見ると

こちらを向いている本棚と並べられた本のタイトルが見えるハズでした。

ところが、本棚がある位置には

白装束に身を包んだ女性のような人影が

こちらを向いて正座している姿がありました。

「誰だこの人?」と心の中で思った途端、

その女性が声にならないようなかすれた声を発し始めました。

その人影は、

「アアアァァ……」と小さい声を出し続けています。

私は「あ……幽霊だ、これ」と直感的に思いました。

まだ金縛りの状態で身体が動かない。

もし、このまま体が動かず女性の人影が

私の枕元の方に移動し始めたら……と思うと、

急に恐ろしくなってきました。

幸い、女性の人影は本棚の位置から動かず正座したまま

こちらをじっと見つめているだけでした。

怖かったのですが、

顔を直視してやろう、とおもって視線を人影の顔に向けました。

ですが、

どういうわけか顔にモザイクがかかったようにボヤけてよく見えません。

部屋は電気がついておらず、時刻もまだ夜中だったと記憶しています。

部屋は真っ暗なハズなのですが、

女性の姿だけが何故か薄青白く光っており、見ることができるのです。

人影はこちらを向いているのですが、

どうしても顔の表情だけは読み取れませんでした。

表情を確かめることはできませんでしたが、

そのときは何故か自分と同じ二十歳くらいの女性だと感じました。

こちらへ向かってこないが、ずっとこちらを凝視しながら

声にならない声を出し続けている白装束の女性の影。

次第に自分の感情が

「怖い」から「腹が立つ」に変わってくるのを感じました。

「人がグッスリ寝ているときにこんなことしやがって。むかつく!」

という怒りのゲージが一杯になるのを感じました。

「怖がらせることだけが目的なら消えてください!」

と心で強く念じながら目を固く閉じました。

しばらくそのまま身を固くしていると

足元の方の気配が消えました。

ふと気づくと金縛りが完全に解除されていました。

時計を見ると午前2時半ごろ。

午前2時から3時頃の時間帯に目が覚めること自体も

生まれて初めての体験でした。

あの白装束の女性は一体私に何を伝えたかったのでしょうか。

この体験について私は2つのことを感じました。

一つ目。

白装束の女性に悪意は感じられなかった。

(かといって、好意的な意図も特に感じられなかった。)

二つ目。

私に縁のある人物(たとえば、ご先祖様とか)が

何かのメッセージを伝えにきた可能性。

今思い返してみても、これ以上のことはよくわかりません。

こういう怖い体験談にありがちな話として、

「この体験の後日、親しい人が亡くなりました」

なんてエピソードがよくありますが、

私自身にも家族にも、知人にも不幸は特にありませんでした。

オチも何もなくて申し訳ありません。

以上

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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