帰る場所

→登場する人物は仮名でお話します。

前職でお世話になった先輩中田さんから聞いた話です。

中田さんと同い年で同期の、高橋さんのお子さんがとある病気で亡くなりました。

中田さんのお子さんと高橋さんのお子さんは偶然にも同い年で

幼稚園も一緒だったそうです。

家族ぐるみで仲良くしていた親友の子供。

中田さんは自分の子供が亡くなった事と同じように悲しかったそうです。

高橋さんのお子さん、春子ちゃんは大変な人気者で

周りの子供達も「死」というものが理解できるわけもなく

「春子ちゃんはいつくるの?」

「春子ちゃんの家に遊びにいく」

春子ちゃんが亡くなってしばらく経っても

中田さんの奥さんがたまに参加するママさん会で

春子ちゃんの話題は出ていたそうです。

その中で不思議な話が、とある奥さんから出てきたそうです。

「そう言えば昨日、うちの子が帰ってきて今日は何したの?って聞いたら春子ちゃんと遊んだって言ってて」

この話を聞いた奥様達も

子供の勘違いだろうと思っていたのですが。

ある日中田さんが自分のお子さんに

「今日はどんな事して遊んだの?」と聞くと

「春子ちゃんとおままごとして遊んだ」

そういったそうです。

中田さんも、勘違いしてるんだなぁと思い奥さんにその話をすると

奥さんは少しビックリした顔をしてこう言いました。

「昨日のママさん会でそう言ってる奥さんがたくさんいた」と

そんなにたくさんの子供が勘違いする事などあるのかと

中田さんは春子ちゃんの写真をお子さんに見せて

「春子ちゃんってこの子?」と聞きました。

お子さんは「そうだよ」と。

どうやら勘違いしてるわけでもなさそうだなぁと思ったので

「じゃあ、春子ちゃんは誰がお迎えに来たの?」と聞いてみました。

すると

「誰も来てなーい、1人でお空に帰って行ったー。」と答えたそうです。

中田さんはこれを聞いて、すぐに高橋さんを家に呼び

この話をして酒を飲み2人で朝まで泣いたそうです。

無念なのか未練があるのか

この話をしながら中田さんは目が潤んでいました。

僕はかける言葉が見つからず、

「子供って死んでも生きているんですね。」と意味のわからない事しか言えませんでした。

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