瞬間怖い【30秒怪談】

【犬】
 霧深い山道を車で走り続けていた時のことだ。
 突然、犬が飛び出してきて轢いてしまった。
 咄嗟に急ブレーキ。横たわっている犬に急いで駆け寄る。
 犬は威嚇するように唸っていた。
 ぐぉうぅぅぅがぁぇぇぇがぁぁぁ… おおぉぉぅぅぅがぁぁえぇぇぇがぁぁぁぁ
「えっ?」
 犬の唸り声が、だんだん……。
 おおぉぉぉまぁぁええがあぁぁぁぁ!! おーーーまーーーえーーーがーーー!!

【まだ入ってる】
 管理会社からの依頼で、アパートの一室を掃除することになった。
 部屋に入ると、とにかく汚くて臭い。 とくに匂いがひどい風呂場の扉を開けてみた。
「あっ、あぁ、スイマセン」
 お風呂にはおばあさんが浸かっていた。 急いで扉を閉める。
 いや、そんな馬鹿な。
 この部屋に住んでいたお婆さんは、 そのお風呂場で死んだはずなのに……。
 もう一度扉を開けて確認するか、どうしようか……そう思っていたら、内側から誰かがドア開けようとガタガタガタ! 急いでアパートから逃げ出した。

【元カノ】
 彼氏と初めてのドライブデート。
 長いトンネルに入った時に、ふと彼の顔を見た。
 泣いている。目を大きく見開いて涙を流している。
「えっ? どうしたの?」
 彼はチラチラとルームミラーで後ろを見ながら震えている。 私も振り返って確かめてみる。
 クルマのトランクの上に、血まみれの女の顔が突き出していた。
「ギャッ」と叫んで私は彼にしがみついた。
 彼が何かつぶやいている。
「ちゃんと埋めた……ちゃんと埋めたはずなんだ……」

【隣の子供】
 うちのマンションのお隣りさんからは、いつも子供たちの騒ぐ声や、 それを叱るお母さんの怒鳴り声が響き渡っていた。
 何日かしてふと、子供たちの騒ぐ声がしないことに気が付いた。
 ある時、そのお母さんとすれ違った。
 子供たち二人におんぶされ、相変わらず大変そうではある。
「最近こどもたちもすっかりおとなしくなりましたね」 そう声をかけた。
「いえ、ちょっと訳があって、田舎の母に預かってもらっているんです……」
 彼女はそう答えて足早に去って行った。

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