起きろ

 去年の10月に自宅で体験した出来事です。
 私の家は築20年屋根裏付き3階建てで、 1階が祖父祖母の寝室リビングキッチン、2階が父母の寝室リビングキッチン及び共同の浴室、3階が姉と私の寝室が1室ずつという部屋割です。
 姉が2年前に名古屋で一人暮らしを始めたので実質5人で暮らしています。
 3年前に転職し、大手企業の期間従業員として勤めていた私にも正社員登用試験のチャンスが巡ってきました。
 なんとか筆記試験に合格し、残すところ本社での面接だけとなりました。
 そこで職場の課長、部長がありがたいことに面接練習をしてくれることになりました。
 ただ仕事中の時間を面接練習に割くことは難しいとのことで、始業時間の8時半より早い7時半に実施することとなりました。
 いつもは朝6時に起床し、6時半に家を出て7時に到着し、駐車場で1時間仮眠を取ってから出社しているので、時間は大丈夫なのですが余裕を持って行きたかった為、いつもより30分早く起きることにしました。

 前日の夜、この日父は仕事で翌日の朝まで帰って来ないため、私と母の2人で食事をしていました。
 私「明日いつもより早く仕事行くで5時半に起きるけど、もし起きてなかったら起こしてね」
 母「はーい分かったよ」
 確かこんな会話をしてからお風呂に入り携帯のアラームをセットして寝室に行き寝たと思います。
 朝方ノックの音とガチャン! という扉を開ける音で目が覚めました。
「朝だぞ起きろ」 こう言われて眠い眼を擦りながら「うーんわかったよ」と返事をしました。
 携帯に時計には時刻5時10分と表示されていました。
 私(あれ? やけに早く起こしてくれたな時間間違えたのかな?)
 こう思いましたがまぁ起きるかと思い布団から起き上がり扉の方を見て妙なことに気づきました。
 扉が閉まっているのです。
 確かにドアを開ける音は聞きましたが閉めた音は聞いていません。
 扉を開け踊り場に出て階段下のリビングを見て更に妙なことに気づきました。
 真っ暗だったんです。リビングが。
 私「……え?」
 疑心暗鬼になりながら階段を降り、リビングの電気を付けましたが、やはり誰もいません。
 私「母さんまた寝に行ったのか?」
 とりあえず朝食だけ食べて着替えて仕事に行こうと思い準備を始めた頃、隣の寝室から母が出てきました。
 母「おはよー偉いじゃんちゃんと起きてきて」
 私「おは……え? 起こしてくれたじゃん」
 母「え? 起こしに行ってないよ。今起きたばっかりだもん」
 それ聞きある事に気づいた瞬間全身の鳥肌が立ち、急いで着替えて家を出ました。
「朝だぞ起きろ」
 この声母の声ではなく 聞いたことのない「野太い男性の声」だったのです。
 それから運転中も震えと悪寒が止まらず会社に体調不良の連絡を入れ、面接練習も別日に変えてもらい、その日は漫画喫茶で過ごす事にしました。
 夕方家に帰りましたが家族が怖がると思い、そのことは伝えませんでした。
 未だにその家で暮らしていますが、それからこのような体験はしていません。
 ですが、あの声を思い出すと今でも鳥肌が立ちます。

朗読: モリジの怪奇怪談ラジオ

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