夢のお告げ

 ちょっと変な話をします。 しかし、とても不思議な話だと思うので、書くことにしました。

 私の祖父は、 「孫は男だけでいい」 と言って、女の私を嫌っていました。
 当然ですが、兄と弟は、とてもかわいがられ、大切にされていました。
 弟を泣かせて、怒った祖父に外まで追いかけられたという怖い記憶もあります。 だから、私も祖父が大嫌いでした。
 一番不満だったのは、女は嫁に出す時、お金がかかるという理由で、親戚などから貰ったお小遣いやお年玉、お祝い金をすべて奪われたことです。
「ちゃんと銀行に貯金しておいてやるから」 と言っていました。
 もちろんその祖父からお年玉を貰ったことは、一度もありませんでした。そればかりか、祖父に何かを買って貰ったということも、全くありませんでした。

 私が中学生になった時、平家だった家に、二階部分が増築されました。
 二階なので、階段の昇り降りがあるにも関わらず、年寄りの祖父と祖母が、新しい広い二階部分を二人だけで使用しました。
  一階と二階に分かれての生活で、祖父とは益々距離ができ、会話も全く無くなりました。
 同じ屋根の下に暮らしながら、ほぼ他人のような感覚でいたのですが、親戚などから貰ったお金だけは、私が成人するまで、ずっと奪われ続けました。
 母からお小遣いを貰っていましたが、それだけでは欲しい物も買えず、高校に入学すると、私はこっそりバイトを始め、自分だけのお金を手にしました。
 それで、早くに社会との関わりが発生して、自立心が芽生えたと思います。
 大学への進学については、 「お金がかかるし、女に必要ない」 と、祖父に大反対されましたが、両親が説得してくれて、何とか入ることが出来ました。
 毎日、授業とバイトに明け暮れて、家には寝るためにだけ帰るという生活でした。
 バイト代で、洋服も自由に買えるようになり、それを入れるタンスが欲しくなり、自分のお金で買いました。
 大きなタンスが配達されて、祖父にも私が買ったことが分かったようです。
 すると祖父がきて、 「お金を出してやる」 と言ったのです。 本当に驚きました。
 今までお金を奪われても、貰ったことなど一度もなかったのです。
 しかし私としては、意地でも受け取る気持ちはありませんでした。

 そして大学4年の秋、私は就職活動で、ある企業の就職試験を受けました。
 その日、朝早く家を出て、新幹線で試験会場に向かいました。
 ところが、午前中の筆記試験の最中に、急に身体中に冷や汗が出てきて、頭痛と吐き気に襲われました。
 しんと静まり返った試験会場で、その雰囲気を壊すわけにもいかず、ましてや試験を放棄してしまえば、今までの苦労が水の泡となってしまいます。
(こんな大切な時になんで具合が悪くなるのよ)
 私は、なんとか苦痛に耐えながら、答案用紙を埋めていきました。
 ふと、顔を上げた時、通路の少し先に黒い薄い影が見えて、私は試験の担当者が見回りをしているのだと思い、再度顔を上げると、担当者は正面の椅子に腰掛けていました。
 通路には、誰もいなかったのです。
 不思議に思いながらも、何とか午前の部を乗り切って、昼休憩で持参した頭痛薬を飲みました。
 すぐに体調も回復し、午後からのグループディスカッションを無事に終えることが出来ました。

 夕方、新幹線のホームで家に電話すると、兄から、 「落ち着いてよく聞いて。お爺さんが死んだから、早く帰って来い」 と言われました。
 祖父は、その日の午前中、部屋で一人で倒れ、亡くなっていました。
 前記した通り、祖父の部屋は二階にあり、祖母は既に亡くなっていたので、広い二階にたった一人で過ごしていました。
 昼食の準備が出来て、その日仕事が休みだった父が呼びに行って、発見したそうです。
 そういえばと、筆記試験の最中に具合が悪くなったことを思い出し、もしかしたら、祖父がお別れでも言いに来たのかなと思いました。
 私としては、悲しみよりも、大切な試験の時にわざわざ邪魔をしにくるなんて、最後まで酷いなと思っていたのです。
 しかし、ここから色々な事が判明して、私自身に様々な不思議な現象が起こるようになりました。
 まず、私名義の貯金通帳に長年に渡り、奪われた金額以上の物凄い大金が入金されていたのですが、印鑑が祖父の物であった為、残念ながら、相続税が発生してしまったこと。
 そして、祖父の命日に邪魔されながら試験を受けた会社に、なんとか合格して入社しものの、その会社が、なんと倒産してしまったこと。
 もしかしたら、邪魔をしにきたのではなく、 「この会社は、駄目だ」 と伝えにきたのかもしれません。

 更に、それから度々祖父が、私の夢の中に現れるようになったのです。
 例えば、私が帰省して、免許証を無くして困っていた時、夢の中に現れた祖父が、仏壇の横の長い掛け軸を触っていたので、翌朝、掛け軸の裾をめくるとそこに、無くした免許証がありました。
 また別の日、夢の中で祖父が、実家の母の部屋の前で、 「早く、早く」 と慌てているのです。
 目が覚めてすぐに、母に電話しましたが出ません。
 他県で就職していた私でしたが、たまたま休みだったので、急いで新幹線に乗り、家に向かうと、母がベッドの傍らに倒れていました。幸いにも大事には至りませんでした。
 祖父とは生前、ほとんど会話が無かったのですが、頻繁に私の夢の中に登場するのです。
 そして、色々な事を知らせてきます。
 更には、私が就職して間もない頃、他県で一人暮らしをしていたのですが、アパートの部屋にはあのタンスも持ってきていました。
 毎日残業で帰りも遅く、疲労も溜まり、朝、起きれなくなりました。
 そんな時、地震のようなガタガタ音で、慌てて飛び起きるのです。
 初めは、二階の住人がバタバタしていて、そのように聞こえたのかなと思っていたのです。
 ところがある時から、 (タンスがガタガタ鳴ってる)という事に気が付きました。
 寝坊して遅刻しそうになると、ガタガタと鳴り出しました。
 なんとなく祖父の仕業ではないかと考えるようになり、タンスは処分しました。

 恐らくこれらは、祖父の後悔の念ではないでしょうか。
 血の繋がった孫なのに、女である私をないがしろにしてきた事を終盤になって後悔したのかもしれません。
 私が、自分であのタンスを購入した時、祖父はとても慌てていました。そして、己の過ちに気付いたのかもしれません。
 逆に私は、祖父のお陰で早くに自立心が芽生え、たくましく成長することができました。

  一つ気掛かりなことがあります。祖父が夢に出てくるということは、成仏出来ていないということではないでしょうか。
 今となっては、心配しないで安らかに成仏して欲しいです。

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