僕しか知らない電話ボックス

 初めて投稿させていただきます。文才がないため分かりづらいと思いますが読んでいただければ幸いです。

 これは私が中学2年生の時の話です。
 大阪市東淀川区のとある地域、淀川の堤防沿いにある二棟の十数階建ての公営団地に挟まれた団地広場で遊ぶ約束をしたある日の出来事です。
 当時、携帯電話を持っていなかったので友人との遊ぶ約束は学校で話を合わせて帰る、というもので、待ち合わせ時間や場所の変更は家の固定電話で連絡を取っていました。
 土曜日の朝九時に前述の場所で待ち合わせしており、私の家からは徒歩5分程なので、少し余裕を持って八時四十分に家を出て、十五分前から待っていました。
 この団地広場には遊具等は無く、中心に公園でよくあるような 柱の先端に丸い時計のみという形の時計と、そのすぐ下に公衆電話ボックスが一つ。
 広場横にはバス停があり、そのバス停の側にも公衆電話ボックスがありました。
 子供ながらにこんな近くに二つも必要なのかと思っていた記憶があります。
 待ち始めて十五分。約束の九時となりましたが友人が来ません。
 ちょっと遅れてるのかと思い、さらに十分待ちましたが現れず、私は時計の側の電話ボックスで友人の携帯へと電話をかけました。
 以下、友人をAとします。
私「もしもし? 全然けえへんやん、何してるん?」
 少し不機嫌そうに聞きました。
A「あ、ごめん! もう一人誘って呼びに行ってたから遅れてるんよ!」
私「そうなん? わかったもうちょっと待っとくでー」
 そう言って電話を切り、もう一人って誰やろうかと考えながら再び時計の下で待っていましたが、さらに十五分待ち九時半になっても 友人は現れませんでした。
 私は苛立ちと呆れにより、帰ることにしました。
 家は玄関を入るとすぐT字路の形で右がリビング、左が寝室や自室。 玄関とリビングの間の空間に固定電話があります。
 イライラしながら帰宅した私が玄関を開け靴を脱ごうとしていると、リビングの方から母親の声で「〇〇!(私の名前)Aから電話かかってきてたで!」 と、言われました。
 もしかしてもうちょっと待てば来たのか? と折り返し電話をかけました。
 するとAは、私が話すより食い気味に怒鳴りました。
A「あ、おい! なんでけえへんねん! 九時集合ゆうてたやん! もう三十分以上待ってるぞ!」
 私は訳がわからず言い返します。
私「は? いや十五分前から待ってたけど友達もうひとり呼ぶから遅れてるって 言って全然こんかったのお前やんけ!」
A「え、なんでもうひとりおるの知ってるん?」
私「何? さっき電話した時自分がいうたんやん」
A「さっきって俺家にかけたら親出てお前と喋ってへんし」
私「いや家電じゃなくて俺が公衆電話からかけたほうな!」
A「いやいや、お前からかかってきたの今が初めてやしなにいっとん?」
私「かけたやんさっき。だから友達呼んでること知ってるんやんか いや、とりあえずそっち行くわ」
 私はAの言ってることがよくわからず、直接話そうと思い再び団地広場に向かいましたが、そこにAともうひとりの友人とやらは居ませんでした。
 ここで私はいたずらをされていると思い、イライラもピークだったので すぐに家に帰ってもうゲームでもしようと帰路につきました。

私「朝早起きしたのに無駄な時間やわほんま。お昼ごはんまでゲームしてもうのんびりしよ」
 なんて独り言をぼやきながら家につき玄関に入ると、玄関扉を閉めてすぐに、ガチャっと扉が空きました。
 振り返ると母親が買い物袋を持って帰宅していました。
私「え? 買い物いってたん? お昼ごはん?」
母親「はぁ? なにゆうてんのお母さん朝から仕事で今買い物して帰ってきたんや! もう、はよどいて」
私「???」
 さっき家出る前、Aから電話あったと伝えてくれたのは母親だったので、いったい何を言ってるんだと疑問に思いましたが、後ろから急かされて慌てて靴を脱ぎリビングに行くと、おかしなことに気が付きました。
 土曜日朝のテレビでも、とつけたテレビの画面上には 夕方にいつもついてるニュースと17:03という時間表示。
 朝の九時から、歩いて五分のところへ二往復しただけ。
 私の感覚では本当にそれだけの時間しか経っていません。
 しかし現実、時計が指すのは夕方の五時。
 ベランダへ出て外を見ると夕日が差していました。
 私が友人だと思い電話で話をしたのはいったい誰だったのか。
 Aから電話だと伝えてくれた母親の声は何だったのか。
 この時間が飛んだような現象はなんなのか。
 私一人、違う時間軸の世界へ踏み入ってしまっていたのでしょうか。
 とても不思議な体験でした。

 という話を先日、母親に話しました。
二十五歳の私「って言うことがあったんよー。てかさ、なんであの団地広場、すぐ横のバス停に公衆電話あんのに広場内の時計下にまで 公衆電話あるんやろな(笑)」
母親「はあ? あそこバス停以外公衆電話なんかあらへんで」

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