硫黄島にて

 第二次世界大戦時に、食糧も水もない過酷な状況下で日本軍とアメリカ軍が戦いあい、多くの犠牲者を出した硫黄島については、映画などで知ってる人も多いはず。
 硫黄島には自衛隊の基地がありますが、一般の方は就労以外で立ち入ることが禁止されているので、あまり馴染みが無いと思います。
 私の知人であるSさんという航空自衛官の方から聞いた話です。

 Sさんは約15年前、短期間硫黄島で仕事をしていたそうです。
 当時携帯電話はありましたが、硫黄島では電波が通じず、お店や娯楽がないため、夜はとても暇だったそうです。
 ある時仲間内で何かおもしろいことをしようと言う話になり、当時隊員の一人が持ってきていた、声を録音できる目覚まし時計を使って遊ぼうと言うことになったそうで、お酒を飲みながら、録音する時には別室でおのおの面白い言葉や歌を歌って録音しては、その度に目覚ましをセットしてゲラゲラと笑っていたそうです。
 ある隊員が、七つの子と言う、「かーらーすーなぜなくのー」と言う有名な童謡を録音していて、「下手くそだなぁ」と皆で笑っていたところ、目覚まし時計から、録音していない音が流れ始めたそうです。
 ジジ……ジジ……
「……る……こち……てっ……」
 ジジ……ジジ……と、電波の悪い無線で話すような、途切れ途切れの声のようなものが聞こえた後、 パパンッ!! パンッ! と、乾いた発砲音が聞こえてきたそうです。
 それまでどんちゃん騒ぎだった部屋は一気に静まりかえり、誰ともなくすぐに部屋を片付け始め、寝る準備を始めたそうです。
 幽霊を全く信じていなかったと言うSさんでしたが、苦しい状況下で亡くなった多くの犠牲者が眠っているこの島で盛り上がってしまい、まずいことをしてしまったかもしれないと少し反省したそうです。

 硫黄島の宿舎では今でもルールがあり、 玄関の前にコップ一杯の水と、タバコをお供えすること。
 これを切らしてしまった人の話も聞いたことがありますが、水やタバコを求めて沢山の魂が出てきてしまうと言っていました。
 他にも、硫黄島の砂の一粒も持ち帰ってきてはいけないなど、細かいルールがあるようで、不謹慎ですがオカルト好きな私としては心が躍ってしまうのが正直なところです。

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