以前こちらに【さようなら】というタイトルで書き込みをさせてもらった者です。
簡単に前回の話を説明させてもらうと……オレと友人のヨシキで、挨拶を返さないカズマを問い詰 め、その結果カズマの口から恐ろしい話を聞かさ れることになりました。
実はカズマが別れの挨拶をすると、その相手が必ず死んでしまうと言うのです。
オレたちは何か良い解決方法はないかと、この 話をネットに上げる事にしたのです。
と言うわけで、オレたち三人は例のバーガーショップの二階に陣取り、スマホ片手にネットでの反響がどうなったのか、確認してみました。
「オイ、これどうよ、おもしろいぞ」
ヨシキが スマホ画面を見せてくる。
そこにはアニメキャラのようなカワイイVtuberのお姉さんが映っており、ホラーホリック図書館に掲載された怪談を朗読しているところだった。
しかも、オレたちが投稿した「さようなら」を読んでくれている最中だ。なんだか不思議な感動がある。
画面の中のキャラクターがオレたちの書いた話を読んでくれているのである。
しかもこの時はライブ配信をしており、画面の右側に出ているチャット欄には、視聴者たちの生 の声がリアルタイムに流れていた。
オレたちはそのチャットにも注目していた。
やがて朗読も終わり、チャット欄には拍手の絵文字が並ぶ。
一通り盛り上がったところで、カズマが「さようなら」と言わなくて済む対策方法が視聴者たちからいろいろ提案されだした。
それをヨシキが読み上げていく。
「のどに殺虫剤を撒く」
「ボクを殺す気か」とカズマ。
「声帯を取ってしまう」
「しゃべらせて!」
「またね、って言ったら死なないかも」
「なるほど……目上の人には使えんけど……」
「さよならって大人になってから言わないな」
「えっ、大人ってさよなら言わないの?」
中学生のオレたちにはまだまだ知らないことが多すぎるようだ。
「お先に失礼します……ってのは?」
「それは自分が先に死にそう」
「お疲れ様です、ご苦労様です……」
「ボクまだ中学生やぞ! おっさんやん!」
「神の祝福を!」
「死神来とるんやぞw」
「アディオス!」
これには三人で爆笑した。
「やべぇコレw」 「あばよっ!」 「ギャハハハ」 「全部ウェーイで通す」 「あっはははははは」
もう三人で大爆笑である。
「大喜利やん」
「なんや、結局ネタに走ったなぁ」とヨシキ。
「いや、でもヒントはいろいろあったよ」
これだ! という解決策は無かったが、なんとなく光明が見えた気がして三人で笑っていた。
「オイ、おまえらさっきからうるせーんだよ」
オレたちの前にぬうっと大きな影が立った。 顔を見た瞬間オレはびびった。
この町でも有名な 不良高校生の五人組だ。
人目も気にせず堂々とタバコを吸い、オレたちを見降ろしている。
「オラ、おまえらドコ中だよ」
オレは胸ぐらをつかまれて、激しくシートに叩きつけられた。
ヨシキの目に怒りの炎が見え、今にも不良たちに 飛び掛かりそうになっていた。オレはそれを止めて謝罪した。
「す、すいません、ごめんなさい」
「オラ、失せろガキどもっ!」
「す、すいませんでした!」
オレたちは急いで 荷物を持って席を立ち、階段へ駆け寄った。
「オラ、走れ走れ走れ」
不良たちはオレやヨシキ、カズマの頭をバシバシと小突いてくる。
最後にリーダー格のやつがオレの尻にケリを入れてきた。
「イッタ!」
あやうく階段から転げ落ちそうになった。
階段下まで逃げ延びたオレたちに、やつらの笑い声が聞こえてきた。
無性に腹が立ったが、ケンカをして勝てる相手ではない。
が、カズマのやつが突然「ちょっと先輩たちに 挨拶してくるわ」と言ってまた階段をトントンと 登って行った。
「えっ? ……挨拶って……まさか」
そう思った次の瞬間、バーガーショップの店内が急に色を失い、 オレとヨシキの間を縫って、真っ黒な姿の死神 が物凄いスピードで階段を登って行った。
一週間後。暴走族の一団が大型トラックと衝 突する事故を起こし、高校生五人が死亡した。