空に咲いた顔

 これは、私が現在の勤め先で働き始めたばかりのころ、配属された部署の先輩から聞いた話です。

 先輩がまだ中学生か高校生のころ。
 同級生の男子生徒が、ある夏の日、海水浴に出かけたそうです。
 しかし、残念なことに、海水浴に行った先の沖合で、波に呑まれて命を落としてしまいました。

 その男子生徒が亡くなってからのある日のこと。
 夏休みが明けて、ちょうどクラスは新学期の授業中。
  ……と、ここまではよかったのですが、次の瞬間……。
 窓際に座っていた、一人のクラスメイトが、窓の外を見て息をのんだそうです。
 それもそう、窓際には、夏休みに溺死した男子生徒の生首(プリントアウトしたような顔)が、空に浮かんでいたのですから。

 これは、私が今までに見聞きした中でも、最も恐ろしい体験談でした。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ
朗読: かすみみたまの現世幻談チャンネル

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