祀られる

ある夏の日、山裾の公園の奥隅に鳥居があるのを見つけ、軽い気持ちで近づいて行った。

その公園は小高い山の裾野に沿って整備されており、遊具と芝生の広場があった。

小学生の時に遠足で来たけど、山に近づく事はもちろん、覗く事も許してもらえなかった。

だから、あ!こんな所に鳥居がある。初めて気付いた。なんの神様だろ?そう思った。

鳥居から山を覗くと奥まで参道が続き、木々に囲まれ涼しげに見えた。

赤い木の鳥居から山に入ると、奥に石作りの古い鳥居があり、その先の斜面に丸太で作った階段が真っすぐ敷いてあった。

階段は坂の様にきつく、登って行くうちに木々の緑は深くなり、なんだか薄暗く気持が悪い感じがした。

階段を登りきった先に、小さな石の祠がポツンとあった。

祠の真中に四角い穴があいていて、中が薄黒く見えた。

鬱蒼とした木々に囲まれて薄暗いその場所は、なんだか気持ち悪く感じた。

そう思うと、どんどん怖くなってきて、人に囲まれている様な、見られている様な感覚に襲われ、体中の毛が逆立つ程、異様な感じがした。

もう早く戻りたくて、

「こんにちは、近くまで来たので寄りました。さようなら」

と手を合わせ挨拶をすませると、急いで丸太の階段を下りた。

とにかく怖かった。

途中からは、もう逃げる様に走って階段を下りた。

鳥居をぬけて広場まで走ると、夏の太陽が温かく感じた。

助かったと感じたし、もう二度と近づきたくないと思った。

その夜、夢を見た。 私は、昼に見つけた祠入り口の鳥居の前に立っていた。

嫌だなぁと思いながらオドオドと周りを気にし、丸太の階段を登って行く。

辺りには薄く霧が立ち込めて、木々は森の様に重く感じた。 祠まで来て、私は渋々手を合わせた。

嫌な感じがした。

風が吹いて来るような、吸い込まれる様な変な感じがした。

急に祠に開いた四角い穴がグニャっと曲がり、グルグル景色が歪み、キーンという耳鳴りが聞こえ意識がとんだ。

気が付くと私は、石で出来たベランダ位の大きさの洞窟にいた。

狭い洞窟は寒いくらい涼しかった。

石壁には四角い大きな穴というか窓があって、何もない狭い洞窟に、そこから光が差し込んでいた。

四角い窓から外を見ると・・・・・高くそびえ立つ木々、丸太の階段。

体の中が冷たくなって行く。

この景色は昼間の祠だ。

あれは、走って逃げ帰った階段だ。

ここは、祠の中だ。

私は四角い窓から身を乗り出して逃げようとした。

でも、空気の膜があって外に出られなかった。

「出して。ここから出せー!!」叫んだ。

なんで私が閉じ込められなくちゃならないんだ!いったいどうなってんだ。

「出せ!何のつもりだ!ふざけんな!」

必死で騒いでいると、人が次々とやって来て私に手を合わせる・・・・・。

「バカじゃないの!私は神様じゃない!願いなんか叶えられない!」

そう怒鳴ってやったら、男の顔が覗きこんできて、ニタッと笑った様な気がした。

ボヤ~として顔はハッキリ見えないが、口角がグッと上がった事だけはわかった。

『たばかったな!』頭の中に誰かの声が響いた。

とっさに上を見上げたが誰もいなかった。

石壁をバンバン叩いて、出口が無いか、何か隠れていないか探した。

「どこだ!出て来い!言いたい事があるなら、はっきり言え!」

叫びながら石壁を叩き、祠の主の名前が彫られていないか探したけど、何も見つからなかった。

私はの祠の中で叫び続け、疲れ果てて寝てしまった。

気が付くと、朝だった。布団で寝ていた。

手が御影石の様なまだら模様に変色し、指が曲がらないほど、むくんでいた。

なんだか石壁を叩いた痕の様に思えた。

ただの悪夢だったのか、何かを伝えようとしたのか、何もわからない。

あの祠は、本当は何を祀っているんだろう。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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