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奇妙な遺影

ある寺をお詣りしたとき、いやなものを見た話。

その寺のご本尊は、私の守り本尊だ。

全国的に有名な寺でもないので人も少なく、ゆっくりとお詣りし御守りもいただいた。

本堂の裏には、幾つかのお社がある。

ここは、言ってはなんだが、丁寧にお祀りされていない。

なかでも一番荒れているのは、稲荷社だった。

石燈籠が崩れたままだったり、横倒しになっているものや、首の落ちたお狐さんまで放置されている始末。

それでも度々訪れる親しみのある寺なので、お稲荷さんへ声をかけ軽く手を合わせた。

「お稲荷さん、寒いですね」

この寺には優美な日本庭園もある。

それらを時間をかけて散策しながら、夕刻になったので、帰宅することにした。

寺なので、隣接して墓地がある。

誰かが、その入り口にある鐘を鳴らした。

真冬の硬い空気を揺るがして、深い鐘の音はなぜか続けざまに鳴らされた。

それを聴きながら墓地の入り口にさしかかった時、鐘の音の余韻はまだ残っていたが、そこには誰もいなかった。

ただ、地べたに何か置いてあるのに気がついた。

大きめのモノクロ写真だった。

額は無く、無造作にガラスの板がかぶせられている。

お爺さんの遺影だった。

薄汚れたガラス板に弱々しい陽が反射していて見えづらいが、確かに遺影だ。

何でこんな地べたに遺影が置きっぱなしに?と驚いたとき、顔の部分が変に見えた。

白く曇ったように、顔が見えない。

ん? 不意に、白い狐の顔に見えた。

狐の顔に、黒い紋付き羽織り。

私は、止めかけた足を無理にも進めた。

じっと見てはいけないのじゃないかと思いながらも、目は離せなかった。

まるで、ガラスの上から顔の部分を指でなぞって曇らせたかのように、狐の顔が描かれていた。

私は迷わず、お詣りをすませた本堂に再び戻り、もう一度、お詣りをした。

悪いものではないかもしれないけれど、とても怖いと思ったので、しっかりと手を合わせてから急いで家路についた。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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