通夜の準備

 小学校低学年のころ、寝ていると母に起こされました。
 母は「おじさん(近所に住んでいて、母のパート先の年配の方)の息子さんが亡くなった。お通夜の準備に行くから一緒に行こう」 と言うのです。
 ですが、私はその息子さんは知らないことや、 寒い時期でたぶん深夜0時を回っていたこと、 父や隣の家の伯母と一緒に行かないのか尋ねましたが、 「もう遅いから」「一人じゃ怖いから一緒に行って」と言われ一緒に行くことになりました。

 おじさんの家へは歩いていくことになりました。
 実家から徒歩10分程なのですが「寒いなぁ……すぐのとこでも車で行くくせになんで今日は車使わないの?」と子どもながらに思い、母にその事を伝えましたが「んー…」とだけ返ってきました。
 おじさんの家に着き、おじさん「遅いのに来てくれたんだね。ありがとう。さっき病院から帰ってきたよ」と息子さんが安直されている部屋に通されました。
 息子さんが眠っている横に座り、おじさんが顔にかけられた布を取りました。
 まだ20~30代で、眠っているように見えましたが私自身遺体を見るのが初めてで少し怖く感じました。
 おじさんと母が何か話をしていましたが小さかったのでよく覚えていません。
 しばらくして家の電話が鳴りおじさんが席を外しました。
 母は「若いのに大変だね」と、ぽつりと言いました。
 おじさんが戻り母に「今日はもう夜更けで何も出来ない。せっかく来てくれたけどまた明日手伝ってもらえると嬉しい」と母に告げ帰ることになりました。
 翌日、私は学校へ母はおじさんの家に行ったと思います。

 それから10年くらい経ち、看護学生だった私はその事をふと思い出しました。
「そういえば、あのお兄さん若かったけど死因はなんだったんだろう?」と思い母に聞きました。
 すると母は 「は? 何言ってるの?」と。
 私は「え? なんで覚えてないの? 夜中に起こして歩いて行ったじゃん! 車で行けばいいのに歩いたの覚えてないの?」と返しましたが 「え~? おじさんの息子は関東にいるって聞いたけど死んだなんて聞いたことない」
「しかも、そんな真夜中に行くわけないじゃない親戚でもないのに」 と一蹴されました。
 当時は納得いかなかったのですがそれ以上は深く聞きませんでした。

 それから更に15年程たった現在、先日その事や後日談を思い出しました。
 その夜の数日後、おじさんの家に町内会の集金に母と行った際、玄関に置いてある写真が増えていることに気づいた私はおじさんに 「写真増えてる」と一言言うと、一瞬間が空いたあと、おじさんは「そうだよ。よく知ってるね」と。
 しかし母は「なんであんた知ってるの?」と不思議そうに私を見ます。
「この前の夜来たから」と答えましたが、母とおじさんは首をかしげ少し困ったように笑っていました。
 そんな母を見て内心「なんで覚えてないの?」と不思議に思いましたが、私の記憶違いなのか、母がその記憶だけ無くなっているのか。
 母亡きあとの今では確かめようがありません。
 気持ちよく寝ていたのを起こされて寒いなか歩いたことと、初めて人の遺体を見たので鮮明に覚えているのですが……。
 と、ここまでが私の不思議な体験です。
 子ども達とパラレルワールドに関しての動画を見ていた時に思い出したのもあり、「ママ、パラレルワールド行ったかもしれない」とちょっとどや顔で子ども達に話しました笑
 でも、今考えても起こされたところから家に帰るまでの出来事は考えれば考えるほど合点がいかないところが多いです。
 ちなみに母は物忘れがひどく激しいとか認知症でもありませんでした。

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