見える家

 これは、俺が小学6年の時に、母方の祖母の家で体験した話。

 夏休み中に2泊3日で川崎の祖母の家を訪れた時。
 お昼くらいに着いて、出迎えてくれたのは、祖母ではなく、俺のいとこだった。
 この家には、祖母以外に、俺の母親の姉の家族が住んでいて、出迎えてくれたいとこはもう大人で、当時4歳の女の子を産んでいた。
 で、その2人が出迎えてくれて、2人以外は仕事で家にいなかった。
「夕方まで誰も帰ってこないから、それまで居間でゆっくりしていて」といとこに言われ、アイスを出してもらい、くつろいでいた時、いきなり、天井から、「ドンッドンッ」と、人の足音のようなものが聞こえた。
 さらにその直後、居間を出たら真横に見える階段から誰かが降りてくる音が聞こえた。
 祖母の家の階段は、登っていく人とかが見えるタイプで、そこをみても誰も来ていない。
「…え?」と呆気に取られていると、横でぼーっとしていた4歳の女の子が突然「ぎゃぁぁぁぁぁ!」と泣き出した。
 すぐにいとこが抱き抱えてあやし始めたが、女の子はずっと廊下を指さして泣きながら何かを訴えている。
 訳がわからなかった俺は、女の子が泣き止んで寝た後に、いとこに泣き始めた理由を聞いた。
 すると「この家、昔からお化けがいるんだよ」と少しにやけた表情で言った。
 冗談だと思っていたが、その考えはその日の夜に打ち消された。

 夜になって家の人たちとご飯を食べ終え、風呂にも入り、部屋の電気を暗くして寝ようとした時、外から「ザッ、ザッ」と砂利を踏む音が聞こえた。
 ふと、部屋の隅にあるすりガラスの窓を見ると、なんとそこには、こちらを覗き込もうとしている女の姿があった。
 ほん怖に出てきた、玄関のすりガラス越しに覗き込もうとするあの女とそっくりだった。
 怖くなって、布団の中に潜り込んで女に見つからないように必死だった。
 そのまま寝てしまっていて、朝になってご飯を食べている時、そのことを祖母に話してみた。
 すると、「はあ、あんたもついに解っちまったか」とため息をつくように言った。
 もっと詳しく聞くと、どうやら、俺の母親の家系は全員霊が見えるらしくて、10歳くらいの時から、それが何かを理解し始めること。
 4歳の女の子が泣いていたのは、見えた霊がなんなのか理解できず。ただやばい気配を感じ取ったから。
 父親は全く霊が見えないので、その間に生まれた俺は、まだ少し霊感が薄く、今まで見えなかったということが判明した。
 昔、祖父が亡くなった時、家にお坊さんが来たのだが、「この家、外の砂利が霊道になってます」と言われたこともあるらしい。
 少し気味が悪かった俺は、テレビゲームをいとことやって気を紛らわせた。
 しかし、本当に怖かったのはここからだった。

 2日目の夕方、祖母に頼まれて、風呂掃除をしていた。
 祖母の家の風呂は、台所の部屋の横にあって、洗面所の扉を全開にすると、風呂からも階段が丸見えだった。
 で、暑かったので風呂の扉も洗面所の扉も全開にして風が通るようにして風呂掃除を行なっていた。
 その時、またしても階段の方から、「ドンッ、ドンッ」という音が聞こえた。
 まあ、何も見えないだろ。と思って階段の方を振り向いた。
 そこには、前日の夜に俺を驚かせたあの女が立っていた。
「うわぁっ!」と驚くと、台所で夜ご飯を作っていたいとこが顔を覗かせた。
「見えた?」と聞かれて、頷いた。
 もっと怖かったのは、その夜見た夢だ、死んだはずの祖父が居間で合いの手を打っていて、祖父の向く方を見ると、女が衣装に身を包んで、扇子で顔を隠し、鈴を鳴らして踊っていた。
 気味が悪くて、祖父を居間から出して、居間の扉を閉めようとした時、腕を掴まれた。
 その時、扇子から半分顔を出してニヤリと笑っていた。
 そして、一番怖かったのは、その次の日の朝、頭のてっぺんに妙な圧力を感じて目が覚めた。
 すると、顔面から3センチくらいのところに、前日に見た、あの女の顔があって、俺の顔を覗き込んでいた。
 恐怖で動けなかった俺はただただその女の顔を見ることしか出来なかった。
 顔をよく見ると、黒く焼けこげたような跡がたくさんついていた。
 正気を取り戻して、目をこすると、もうその女の顔はなかった。
 妙なことに、いとこも同じ夢を見たらしい。怖かったので、とりあえずお祓いをしてもらい、一安心した。

 その日の夜に、地元の横浜に戻って、夜ご飯を食べている時に母親にその話をした。
 すると、昔母親も同じ夢を見て、同じ顔が自分を覗き込んでいたらしい。
 それから半年経って、俺が中1になる直前で、祖母たちは別の家に引っ越した。
 例の家は、車も通れないほど狭い路地にあったので、そのままリフォームされ、売りに出されている。
 そして、今年高校1年の夏休み、行動制限が大幅に緩和されて初めて新しい祖母の家に行った。
 そこでは霊現象が起こることもなく、平穏に過ごせた。
 でも、いとこが、「あの家、どうなってるか見に行かない?」と誘ってきて、俺も久々に観に行きたくなった。
 車を走らせて家に着いた。
 そこには、もうすっかり綺麗になって、まわりの砂利なども全て撤去された家があった。
 怖いことがあったとはいえ、よく遊びに行っていて、思い出のある家だったので少し寂しかったが、霊道とされていた砂利がなくなって、もうお化けもいなくなったんだと思うと、安心した。
 最後にスマホで、いとこと2人で家をバックに写真を撮った。
 が、写真のアプリで、AIが自動的に映っている人数を識別してくれるのだが、ツーショットのところを開いてもなぜかその写真がない。
 3人以上の写真が保存されている、グループショットの中にあった。
 2階の窓から、あの女がカメラ目線で映っていた。

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