忘れられない夢

 今から20年前、俺が20歳の頃に見た夢の話。

 当時の俺は一人暮らしで、バイトしてるかゲームしてるかで、部屋の窓はシャッター(雨戸)下ろして締め切りで、行く所と言えばコンビニかパチンコぐらいでとにかく何の変化もない同じ様な毎日を過ごしていた。
 でも別にそれが普通で特に病んでいたとかも無いし、それでめちゃめちゃ楽しかった。
 その日もいつも通りにゲームに没頭して朝か昼か夜かも分からない状態で寝落ちする形でベットに入った。
 ここからは夢の話。
 俺は見た事も会った事も無い友達と2人で車で峠道を登っていた。
 友達の運転で、俺は助手席に座っていて、どうやら他の友達達と旅館で待ち合わせていてそこに向かっている途中みたいだった。
 旅館で待ってる友達に、今向かってるからってゆー電話をかけて、電話を切ってのんびり外の紅葉をボーーっと眺めていた。
 ゆーらゆーらゆーらゆーらって身体が右左に揺れながら峠道を走っていると、だんだん眠くなってきた。
 うとうとし始めたら、運転している友達が、『チッ。こいつおせーな。抜いちまうか。』とボソって言った。
 え? って思って前を見ると真っ赤な乗用車がノロノロ走っていて、それを反対車線にはみ出しながら友達が抜きにかかった。
 俺は嫌な予感がして、『危ないって!いやマジで危ない』って叫んだけど次の瞬間反対車線から車が来て、俺達の車はそれを避ける形で峠道からガードレールを破ってかなり高い山の上から転げ落ちた。
 次に目を開けたら踏切の前に立っていた。
 なんか薄めた墨汁で色を塗った様な薄灰色の世界で、あたりを見渡したが友達が居なかった。
 すると遠くから、おーいって呼ぶ声が聞こえて、その方を見ると、ランドセル背負って帽子を被った男の子と、くたびれたスーツをきたサラリーマン、そしてさっきまで車運転してた友達が居た。
 そっちに歩いて行くと、帽子の男の子が 『君たちどこから来たの?何したの?ここに来てからどのぐらい立ったの?』ってニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
 俺がキョトンとしていると、サラリーマンが『カーンカーンカーンカーン♪電車が参りまーす!電車が参りまーす!』って言いながら手を機関車の真似みたいにしてシュッシュって動かしながら俺の周りを回って来た。
 気持ち悪い引きつった笑顔で回っているリーマンを引き気味で見てたら、男の子が 『うるせーな!てめーのせいで俺はこうなってんだろ?ふざけんな!ここに来て何年たってんだよ!ったくよ!』と子供とは思えない口調でサラリーマンに怒鳴った。
 リーマンは『すみません。。』と言ってすぐに辞めてシュンとなった。
 その間も友達はずっっと無表情でボーッとしている。
 男の子が 『いやね、俺がまだ小学生の時に、こいつの運転する車でこの踏切で轢かれたのよ、そんで俺は死んだ。こいつもそのまま車に乗ったまま電車に突っ込まれて死んだのよ。ここで!そっから何年も何年もここで電車が来るのを待ってるんだよね。』と聞いても居ないのに説明して来た。
 それでも俺はキョトンとしていた。
 サラリーマンが『いやー本当にあの時はすみませんでした。』と男の子に謝っていた。
 すると踏切がカーンカーンってなり始めた。
 その途端さっきまで大人みたいな態度だった男の子が、子供の様な顔で『おじちゃん!来たよ来たよ!本当に来た!電車だっ!』 って叫んでサラリーマンの手を引いて踏切を渡って行った。
 サラリーマンも男の子もボロボロ泣きながら走って踏切を渡ってそのままホームに走って行った。
 俺達がその光景を見ていたら、男の子が『はやくはやく!お兄ちゃん達もはやくこっちに来なよ!踏切閉まっちゃうよ!』ってホームから言ってきた。
 とりあえず俺と友達はホームに向かった。
 そしたらいつから居たのか、顔が真っ白のザ・駅員の格好をした人横にが立っていて、『○○行きの電車が参りまーす!お乗りのお客様は白線の内側に下がってお待ちくださーい』と低い声で数回アナウンスした。
 男の子とサラリーマンはもうウキウキが止まらない感じでいても立ってもいられない感じでソワソワしながら電車が来るのを待っていた。
 相変わらず俺達はキョトンとしてて、電車が来る間、暇だから電光掲示板とか駅名?の書かれた看板を見ていた。
 なんてゆーか読めるんだけど読めない漢字で全部書かれていて、次の駅と前の駅の駅名もその駅の駅名も漢字で書いてあるけど読めなくて、不思議だなーって思ってたら真っ白の電車がホームに入ってきた。
 そのホームに入ってくる電車の風が冷たくて、電車の中は薄暗くて中の人達はみんな吊り革も持たずに席にも座らずに下を向いて乗っていた。
 それで横にいた男の子とサラリーマンが 『やったやった!やっと乗れる!長かったなぁ。。長かったねぇ。やった。。。ね。本当に来たね。。やっと。』って2人で泣いてる様な笑顔で手を繋ぎながら乗って行った。
 それを俺達はまだホームの中から眺めていて、その間も電車はドアを開けながら俺達が乗るのを待っていた。
 どれぐらい立ったのか、俺は乗ってみたい気持ちと乗ったら絶対にダメだって言う気持ちがグルグル頭を回っていて動けなくて、どうしようか考えてたら駅員が 『ねぇ?乗るの?乗らないの?どっち?どうすんの?乗る?乗らない?』 と半ギレで俺に言ってきた。
 俺は本当に困って友達の方を見たら、虚空を見ながらいまだにボーーーっとしていて、俺は何か急にこいつをほっとけない気持ちになって、駅員に 『こいつが正気に戻るまでここで待ちます。だから出発して下さい。』と答えた。
 駅員は 『あっそ。まー良いけど、○○行きの電車はきっともう、しばーーーらく来ないよ?良いよね?それで?。。。。はーい。出発しまーす』と言って男の子とサラリーマンと電車に乗って行ってしまった。
 俺はまた急に不安になって、どうしよどうしようって思ってたら電車が行ってしまったホームと逆のホーム、俺達の背中側のホームに電車が来た。
 何故か頭の中で各駅停車って分かってて、田舎特有の4人がけのボックス席がある電車が止まった。
 俺は乗らなきゃって思って、まだボーッとしてる友達の手を引いて電車に乗って空いてる目の前のボックス席に座った。
 ドキドキしながら窓の外を眺めて電車の出発を待っていると、俺の横にニッカポッカ来た少し小汚い無精髭を生やしたおじさんが座った。
 俺は、え?って驚いていたら、 『にいちゃん達どこから来たの?あの電車乗らなくて正解だよ。良かったなー。』 って話しかけてきた。
 俺は、はぁ。。みたいに返事してまた窓の外をみた。
  電車はいつのまにか動き出していて、窓の外はいまだに薄灰色の世界。
 その景色を眺めてたら、男の人がビルの上から飛び降りてはまた同じ所に戻って飛び降りてたり、車に轢かれてはまた戻って轢かれてる人、首吊りしてはまた首吊りする人、とか同じ事を繰り返してる人が道とか至る所に沢山いた。
 俺はびっっくりしながら外を指さしておじさんの方を見た。
 おじさんは 『あれか?あれは死んだ事が分かって無い奴らだ、君達は本当に運が良い。おじさんもこの電車に乗るのにもう何年もかかったから。 これで、やぁーーっと戻れるなぁ。。よーく見ときな、この景色。。にいちゃんの友達もさ、よーく、、あれ??にいちゃん、これダメだ。にいちゃんの友達ダメだったわ。』 と俺に言ってきて、何がダメなの?って思って友達の方見たら、ボーッとした顔のまま砂ぼこりみたいにサーーって俺の前から消えた。。と次の瞬間胸元の携帯が鳴った。 と同時に夢から覚めた。。
 朝か夜か分からなくてまだ眠かったけど、ガチで寝るのが怖くて怖くてもうその日は眠れなかった。
 起きても現実なのか分からないし、何故か会った事も無い夢の中の友達の事がめちゃくちゃ心配になった。。
 次の日とかも寝るのが怖かったけど、それ以来約20年、あの夢どころか似た様な夢も見ていない。
 人が何度も死んでる姿とかすごいリアルだったし、最初に来た電車に乗っていたら俺は一体どうなっていたのか、もしかしたら夢から覚めなかったんじゃないかとか、今でもたまに考えてしまいます。

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