或るトンネル

 これは、私の従妹のお姉さんが体験した話です。

 現在、そのお姉さんは、医療関係の仕事をしていますが、数年前の当時はアパレルショップの定員さんをしていました。
 その日は、業務を終え、同僚との飲み会に参加していたそうです。
 飲み会を終え、仲の良いメンバーで二次会と称して、同僚宅で男女数人で集まっていました。
 時間も深夜を過ぎたあたりから、怖い話が好きなお姉さんは同僚たちと怖い体験や話について聞いていたそうです。
 そんな話で盛り上がっていると、話の流れで、心霊スポットで有名な地元のあるトンネルに行こうということになりました。
 そこからの準備は早く、車でそのトンネルに向かったそうです。

 トンネル自体は山の中にあり、中心部から40分程の所にありました。
 ついてみると、夜景が凄く綺麗だったそうです。
 トンネルはというと、手彫りのトンネルなのか、内部は凸凹しており、かなり寒かったそうです。
 同僚たちと「怖いね~」なんて、言いながら全体を見て回りましたが、特におかしなことや、いわゆる霊現象的なものは起こらず、その日はそこでお開きとなり、解散したそうです。
 異変は次の週から起きました。
 月曜日、いつも通り出勤すると、いつも遅刻なんてしない同僚の男性が来ておらず、その日、その男性は無断欠勤をしたそうです。
 ちなみにその男性はお姉さんと一緒にトンネルに行った中の一人でした。
 以下その男性をAさんとします。
 またここからはお姉さんが見聞きした話となります。

 それ以降、Aさんの無断欠勤がたびたび続くようになり、 不審に感じた同僚たちは、Aさんの家に行き、何か悩み事や相談事があるのか、困った事があれば相談に乗るという話を、同僚の男性スタッフたち4人で、Aさんにしたそうです。
 その日は励ましもかねて、Aさんの家で酒を持ち寄って男性スタッフで飲み会をしたそうです。
 呑みつぶれるようにして全員が寝た後、スタッフの一人が物音でめを覚ましたそうです。
 時刻は午前二時を過ぎていました。
 物音の正体は誰かが外に出ていった音でした。誰が出ていったのか確認すると、Aさんの姿がありませんでした。
 外にたばこでも吸いに行ったのかなーと、特に気にすることもなく寝たのですが、早朝5時に目を覚ましてもAさんは帰って来ておらず、Aさんが帰ってきたのは6時を過ぎたあたりでした。
 なにをしていたのかと聞いてもAさんの返答は不明瞭でそのまま溶けるように眠ってしまいました。
 無断欠勤の原因はこれではないかと感じた、その同僚はほかの男性スタッフにも、昨晩の内容を話し、全員でもう一泊し、Aさんの後をつける事にしました。
 その夜、午前二時を過ぎると、昨晩と同じようにAさんが家を出ていくので、寝たふりをしていた同僚たちとAさんのあとをついていくと、Aさんは車に乗り出かけるようだったので、急いで車に乗り同僚4人でAさんの後を追いかけたそうです。
 目的地が薄々わかり始めたところで、これはまずいのではないかと同僚4人は思ったそうです。
 車が止まった先は、例のトンネルでした。
 Aさんがふらふらと車を出て、トンネルの中に入ろうするので、急いで止めて、Aさんに「お前、なにしよん!?」と、ほぼ叫びながら聞いたそうです。
 Aさんは虚ろな表情のまま、 「女の子が呼んでる……」 と言ったそうです。
 Aさんを引きずるようにして連れて帰り、つぎの日、Aさん含め5人でお祓いに行ったようです。

 今では、Aさんは元気に仕事をしているようですが、トンネルでの記憶はほとんどないとのことでした。
 女の子に呼ばれているとはどういうことだったのか、今ではもうわかりません。

朗読: モリジの怪奇怪談ラジオ

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