赤服

 某県の田舎大学生だったときの話。

 国家試験を控え、毎日夜遅くまでゼミ室に友人4人と残る生活をしていました。
 ゼミ室は教授が鍵を持っているのですが、 私達より早く教授は帰宅してしまうため、 8階のゼミ室から警備室に鍵を取りに行き、夜12時までに鍵を閉め、鍵を返却するのがルールでした。
 警備室までが遠いため、代表で1人が鍵を取りに行き返しに行くというのが定番になってました。

 その日もいつものようにジャンケンで鍵を取りに行く人を決め私が負けました。
 その頃まだ微弱に霊感があった私ですが、その日は何となく嫌な感じがして 友人について来て欲しかったのですが、ジャンケンで負けてゴネてるだけと思われ 誰もついて来てくれませんでした。
 足早に警備室に向かい、エレベーターに乗ろうとした時にエレベーター横の階段が異様に怖く そっちを見ないようにしていました。
  エレベーターがついた瞬間に誰かが走って階段を登って来たのが分かり、そちらに目をやると、貞子のように髪を垂らした赤い服を着た女性が来てるのがわかり、 急いでエレベーターに乗りました。
 人だとしてもその女性には怖い範囲があるため、咄嗟にエレベーターに乗ってしまいましたが、この時間にわざわざ階段を使うのも変で良からぬものを感じていました。
 警備室に着いて鍵を借りましたが、また8階にあがるのが怖くて、 今起こった旨を友人に電話し、1人降りて来てもらいました。
 友人曰く誰もいなかったことと、霊感ない側の気持ちも考えろと少し怒られましたが、なんとなく安心感がでて、そのままエレベーターに乗りました。
 8階に着くと何故か真っ暗で、廊下の電気が全部消されていました。
 まだ友人2人がゼミ室に残ってるのは確かで、警備員も見回りする時間帯ではないことから恐怖感が増しました。
 廊下の電気のスイッチの位置は分かっていたので、iPhoneのライトで照らしなが廊下を進みスイッチを押したのですが、故障なのか電気はつかないため余計に怖くなり、急いでゼミ室に戻りました。
 先ほどの電話の内容、異様に焦って戻って来た僕ら2人をみて、残ってた友人2人も雰囲気を感じ取ったのか 「……すぐ帰るか」と一言。
 真っ暗な廊下を4人で走ってエレベーターを待っていると、また階段から 誰かがあがってくる足音がします。
 誰も言葉を発さないほどの緊張感が走りますが、エレベーターはまだ来ません。
 早くきてくれ!と心で思いながらすぐさまエレベーターに乗りました。
  エレベーターの明るさと、とりあえず帰れるという安堵感がでたとき、エレベーターが止まりました。
 階についたわけではなく停電して、エレベーター内が真っ暗になり皆パニック。
 ほんの数秒の出来事、電気がすぐ復旧した瞬間に赤い服の女性がエレベーターの中にいるのを皆が視認しました。
「私も……」とその女性が発したときに、再びエレベーターが暗くなり、すぐ復旧すると女性はいなくなっていました。

 後日分かったことですが、階段は一回まで吹き抜けの螺旋階段構造になっていて、 そこから落ちて亡くなった女性がいたとか。

朗読: モリジの怪奇怪談ラジオ


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