臭いお守り

 これは私と私の先輩が体験した話です。
 今はすでにお祓いをして解決済みで、私と先輩の身に何もなくなったのでここに書きます。

 はじめに、私には霊感がありますが、霊を見ることはできません。
 私は“臭い”で霊を感じるタイプで、いわゆる死臭のような形容し難い嫌な臭いとして霊の存在を捉えています。
 話を戻すと、私は休暇で関西の地元に帰省したときに、高校の先輩と久しぶりにご飯に行きました。
 お互い大人になり積もる話もあり、夜も遅くなってしまいましたが、ふとした話から、心霊スポットのトンネルに行こうという話になりました。
 先輩はけっこうヤンチャな人でドライブ好きということもあり、後日そのトンネルに行くと言い出しました。
「お前霊感あるならなおのこと来いや、なんか起きた時のために」と言う先輩に対して、そんな簡単に言わないでくれと内心思いましたが、せっかくの帰省だけど特にやることもなく、私もお酒が入っていたこともあり、その日は承諾してしまったんです。

 後日、先輩の運転でそのトンネルに向かいました。
 そのトンネルの噂は私は聞いたことがなく、どんな霊現象が起こるのか事前に知る由もなかった私は、内心けっこう不安でした。
 そんなことを知ってか知らずか、先輩は「コレがあるから大丈夫や」とおもむろにどこから手に入れたか分からないような、なんの特徴もないようなお守りを見せてきました。
 まぁ形こそ大きめの白いお守りで、安全を願う的なお守りでした。
 私は霊感がある身なので、ある程度お守りの役割というかその“力”はわかりますので、「なるほど、ちゃんとビビって身の安全考えてるんですね」と先輩をいじる余裕さえ生まれていました。
 そんなことを言っている間にトンネルに着きました。なんの特徴もない山道の中にある小さな車道トンネルでした。
 ポケットのお守りを確認してから意気揚々と先輩は車から降りて探索に向かいましたが、私は感じました。例のあの臭いを。
 やっぱ臭え、あの霊の臭い。
 内心「まぁ本物やな」とは思いましたが、経験上その危険度は“中の下”といったレベルだったのを覚えています。
 先輩はお守りと懐中電灯を終始握りながら、特に何も起こらないまま探索はあっけなく終了しました。
 前述したとおり、感想としては“中の下”、そこまで騒ぐほどか?って程度の感想でした。その当時は。

 その1ヶ月後くらいでしょうか、私は東京に戻りいつも通りの仕事に追われる日常を過ごしていました。
 そんな中、例の先輩からの着信がありました。「東京にいるから飲もや」とのことでした。
 心なしか少し元気がないように感じた私は、先輩への心配も兼ねてまた会うことにしました。
 待ち合わせ場所で先輩に会った時は驚きました。
 あんなにヤンチャでエネルギッシュな先輩が、一ヶ月でそんなんなるか?ってほどに痩せて、目の下にクマをつくった貧相な姿でした。
「あれからなんか悪いことが続いて今大変なんや、絶対霊のせいや」とビール片手に言う先輩。
 確かに先輩に何か付いていてソイツが原因なんだな、と再開した時からわかってました。
 だって、あのトンネルの時と同じように臭いから。
「さっさとお祓いとか行ったらええやないですか、顔ヤバいっすよ」と最初は話をあわせてましたが、ふと先輩のカバンの中から短い紐が出ているのを見つけました。
「先輩それ……」と言う私を遮るように、先輩が「今まだ生きてんのはコレのおかげやで」と自慢げに取り出したのはあの時のお守りでした。
「コレが悪いやつから守ってくれとるんや」と言う先輩の手には、黒く変色した焦げたような禍々しいお守り。
「ちょっと見栄え悪いやろ、俺の身代わりに悪いもん吸ってこうなった思うねん」と先輩は言ってました。
 ここまで先輩の話を聞くと、確かにたかがお守りでも他者から見たら、“悪い邪気を自分の身代わりに請け負う神器”のように思うでしょう。
 でもこの解釈、違うんですよ。
 だってそのお守りからすごい死臭がしたんですから。

 これは霊感がある私の見解です。
 お守りはトンネルに行ったあの時、確かに先輩を守る効果を果たしていたはずです。
 しかしあれからお守りの中にいたであろう先輩を守った存在が、なんらかの理由でトンネルにいたモノに“喰われ”、そのモノはお守りの中に巣食った。
 そして先輩はずっとそのお守りの中に巣くった邪悪なモノを大切に扱っていた。というか先輩は、そのモノ自身をお守りとして、大切に“扱わさせられていた”。
 そう、先輩はお守りを持っているから悪いもの引き寄せ続けたんです。
 そのお守りに巣食ったモノが自身のエネルギーにするために、先輩に憑いて操っていたんではないでしょうか。

 これは先輩には言ってませんが、そのお守りはすでにトンネルで臭った時のレベル以上に禍々しいドス黒い死臭を纏っていました。
 もうあれはお守りではないです。あれはすでに呪いです、呪物です。
 この話で私は「心霊トンネルに行ってあぁ怖かったね」ということを言いたいんじゃないんです。
 皆さんの持ってる“お守り”や大事に扱ってるもの、本当に大丈夫でしょうか。
 以上です。

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