昨日の出来事

 これは中学時代の友達の体験談です。

  当時、仲が良かったグループの中に渋谷ってやつがいました。
今はどうしてるか分からないのですが、大学に上がる頃までは付き合いがありました。

 話は中学の時に遡ります。
 ある日の月曜、先生の都合で部活の朝練が中止になった事がありました。
 用もなく部室にいる事を禁止されていたため、仕方なく教室に行くと、渋谷がいました。
 渋谷は部活に入っておらず、朝早く登校してた事を不思議に思い、 「珍しいじゃん」 って、声をかけたんです。
 すると渋谷は、 「ああ」 と、気のない返事を返してきました。
 早く登校してる事も珍しいんですが、やけにおとなしいのも珍しく、 「具合でも悪いんか?」 と、聞いてみたんです。
 すると、 「昨日の事なんだけど……」 と話を始めたんです。

 昨日、つまり日曜日。
  渋谷は家で携帯ゲームをしながらゴロゴロしていたらしいんですが、突然、身体が横を向いたまま動かなくなってしまったそうです。
 息はできたみたいなんですが、指すら動かせなかったと言っていました。
 すると、背中側からドタドタと走る足音が聞こえてきて、 「お兄ちゃん! 台所に知らないおばさんがいる!」 と身体を揺さぶられたそうです。
 ピクリとも身体を動かせない渋谷はパニックになり、そのまま気を失ってしまったらしく、夕方、親に起こされたと言ってました。
 めちゃくちゃ怯えながら話してる渋谷を見ながら、僕もゾッとしました。
 渋谷に兄弟はいないからです。
 家にいるのが怖いため、渋谷は早く登校していたのでした。

 話は以上になります。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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