代わってよ

 これは私の祖母と曾祖母が体験した話です。

 私の祖母と曾祖母は怪談話が嫌いです。
 それを知ったのは幼稚園生の時でしたが、理由は聞きませんでした。
 最近になり、この事を思い出した私は、母に何か知らないか聞いてみました。
 すると母は「自分達がそういう体験をしたから見たくないんだって」と言っていました。

 どういう体験をしたのかと言いますと、祖母が高校生の時にAさんという友達がいたそうですが、病気で亡くなってしまいました。
 その夜その話になり曾祖母は「若いのに、可哀想ね」
 それに対し祖母は「本当に可哀想」と返したそうです。
 次の瞬間『ばぁん!』という音がしました。
 二人は驚きました。ここは二階のはずなのに、人が張り付いていたからです。
 よく見ると、亡くなったはずのAさんが窓に張り付いて睨んでいました。
 するとAさんが口を開けて、はっきりとこう言ったそうです。
「そんなに言うなら代わってくれれば良いじゃない」
 二人は暫く唖然としていたのですが、気付くとAさんはいなくなっていました。
 この一件があって以来、祖母と曾祖母は怪談話が嫌いなんだそうです。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる