大学2年の春、同じサークルの友人が自動車事故で急逝した。
葬儀のため、彼女の実家がある秋田県に行き、お別れをした。
春休み中だったので、サークルのメンバーもたくさん集まり、みんなで揃って彼女のお見送りができた。
しばらくして、新年度の授業が始まり、私もサークル室に顔を出すようになった。
みんなで亡くなった彼女の話をしていると、入口の外の方から、
「ゆかりさーん」
と、名前を呼ぶ声が聞こえた。
それは、私の名前ではない。同じサークルのメンバーの名前である。
しかしその呼ぶ声は、間違いなく自動車事故で亡くなった友人の声だった。
ところが、他の人には、まったく聞こえていない様子。私にだけ聞こえるのだ。
また、別の日も、
「ゆかりさーん」
間違いなく亡くなった友人の声。別の人を呼ぶ声。
そして、私にだけ聞こえる声。
もちろん出入り口を確認したが、誰もいなかった。
その声は、その後も度々聞こえるようになった。
1年が経ち、ゆかりさんを含め、サークルのメンバーを誘って、彼女のお墓参りをした。
その時にみんなで話していて思い出したが、葬儀の際、和尚様のお話の中で、
「人は死ぬまでに皆、食べる量と眠る時間は同じ。」
というお話があった。
亡くなった彼女は、確かに、よく食べよく眠る健康優良児だった。
よく食べよく眠る方は、ご注意下さい。
因みにお墓参りの後、「ゆかりさーん」と呼ぶ声は、まったく聞こえなくなった。
きっと、あまりにも突然の死だったので、
みんなにもう一度会いたくて、呼びに来ていたということだったのでしょうか。