やんとわなし

これは、私自身が数ヶ月前に実際に体験した不思議な話です。

私は、これまでにいくつかの職場を転職した経験があります。

その転職先には、お決まりのパワハラ上司や嫌がらせババァがいました。

この経験をする、3ヶ月前に勤めていた職場で嫌がらせババァに目を付けられ、

精神的に追い込まれてその会社を退職しました。

退職後、これまで自分にパワハラや嫌がらせをしてきた人を思い出しては悔しくて泣いたり、

怒りで全身が震えたりしていました。

心療内科にも通いカウンセリングも受けました。

会社を辞めて嫌がらせやパワハラから開放されて、徐々に気持ちも落ち着きを取り戻し 自由な時間はたくさん有り余っていたので、海に行ったり、好きな写真をたくさん撮りに行ったり出来るようになりました 私の家には1頭のフレンチブルドッグと一緒に暮らしています。

元気で人懐っこい寂しがり屋の可愛い男の子です。

その体験をしたのは、ある日の夕方まだ暗くなりきる前の事です。

私の部屋は8畳ほどの広さで、部屋の奥にベッドが有りそのベッドに腰掛けて

正面に見える窓のカーテンは少しだけ開いていて、その隙間から夕暮れのオレンジ色の向かいの家が見えていました。

その左側には、ワンコのケージを置いています。

ぼんやりと、これまでの嫌なことを頭の中でフワフワと思い出していたら 犬が、

ベッドに腰掛けている私の右隣に大人しく座っていました。

そして、私の右腕にちょっとだけ触れたその瞬間 一瞬で眼の前が目を開けてるのか閉じてるのか分からないくらい真っ暗になりました。

恐くはありませんでしたが、突然のことなので困惑し周りを見渡しても何も見えません。

すると、隣りにいた愛犬が2m程先でお座りしてこっちを見ています。

「こっちにおいで」と、言わんばかりの態度なので恐る恐る前屈みに犬の方を覗いてみると

その先には部屋に置いてある家具や犬のケージなどすべての物がなくなっていて 部屋の2/3程が下から明るくなっています。

ここでまた犬がその明るいところを

「おいで、覗いてみて」

と促しているようで そっと近付いて覗いてみると、そこは意外と新し目の施設を上から見下ろす様な情景でした 。

その施設では、自分にパワハラや嫌がらせをしてきた人達が大きく重たそうな荷物を梱包し運ばされていました。

作業の手を止めると周りの人たちから一斉に責められます。

他にも知っている顔の人はいましたが、仲の良かった人達は楽しく机に向かってコーヒー片手に軽作業をしています。

私の部屋はマンションの1階なので、その光景以前に部屋の下は土の中です。

そして、施設の中を覗き込んでいる間、どこか遠くから

「やんとわな~し、やんとわな~し」

とハッキリではないですが、声が聞こえ続けていて

それは、段々私に近付いて来てすぐ傍でずっと繰り返されていました。

なぜか、その「やんとわな~し、やんとわな~し」という声を聞いていると気持ちが落ち着いて来ます。

そのまま体感で2-3分その光景を見ていると再び真っ暗になり ハッ!と気がつくと、

自分は最初のベッドに腰掛けた状態のままでした。

そして、犬は私の膝をゆっくりペロン、ペロンと確かめるように舐めていました。

もちろん、部屋の状態はもとに戻り、あるべきものがあるべき場所にありました。

「不思議な体験をしたもんだ」とやや放心状態だった私を目の前にオスワリしている犬を見ると

今見た情景を「どうだった?」みたいな顔でじっと私の目を見つめています 体験中聞こえていた声

「やんとわな~し、やんとわな~し」

という言葉が気になり ネットで調べてみましたが、何もヒットするものはなく

古語の「やんごとなき」くらいしか辿り着きませんでした。

私がこの体験で感じたのは、

「辛い思いをしたかもしれないけど、どこにでもあることで、もう忘れてしまいなよ」

そういうことを、愛犬が教えてくれたように感じました。

あれから、半年近くなりますが会社に勤め人に使われる働き方をせず

今は、フリーのカメラマンとして活動しています。

「やんとわな~し」どんな意味なんでしょう?

朗読: 繭狐の怖い話部屋
朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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